いかに患者さんの負担が少ない手術を届けるか
手術看護師の岡村厚志は二人に共通しているのは、“術野”が綺麗なことだと言う。手術を行なっている部分の見通しがいいという意だ。
「スピーディーで、血が出ないので術野が綺麗。血が出ると電子メスで焼いて止血します。そうすると黒くなる。二人も焼くんですけれど、血が出ていないから焦げない。綺麗で早い」
つまり、どのような順番で手術を行うのか、どの場所を切れば出血が最小限で済むのかを考え抜いているのだ。
大森は竹政が開発に関わったダビンチSPを使いこなす術者でもある。
「食道の手術をするとき、ダビンチSPならばテニスボールぐらいの空間で綺麗に手術ができる。傷が一つで済みます。ダビンチSPを使えば腹腔鏡では難しかった手術が、均てん化できる」
かつて大森しかできないと言われていた手術が他の術者にも可能になる。ただし、単孔式のダビンチSPを導入している医療機関は限られている。
傷が少なければ少ないほど、手術の痛みは軽く、術後の回復も早い。手術支援ロボットを複数台導入できる医療機関ならば、1台は単孔式があってもいいと大森は考えている。
「ぼくたちはいかに患者さんの負担が少ない手術をお届けできるかを考えています。他の病院がやらないならば、安全を担保しながら、自分たちで切り拓いていく。それだけのポテンシャルがロボット手術にはあるんです」
さらにロボット手術にAI(人工知能)を取り入れた手術のナビゲーションシステムの開発に関わっている。
現役で手術ができるのは、あと1000件
もう一人の名手、竹政もAIに可能性を見ている。
「腹腔鏡、ロボットに続く、次のイノベーションは間違いなくAIです」
ロボット手術では動画の録画、解析が進む。この流れは止まることはない。ただし、ダビンチを製造しているのはアメリカの企業だ。日本の術者の技術が吸い上げられることになる。いかにそれを守り、日本の患者に還元するか。
また、手術支援ロボットは、ほぼ独占状態にある。競合企業が限られているため、運用コストが高い。それをどう下げて、持続可能にしていくか。
そして、後進の指導にも力点を置く。
「ぼくが現役で手術ができるのは、あと1000件ぐらい。それ以外の患者さんにも貢献するため、自分のマインドを引き継いでくれる人をたくさん育てたい」
すべては患者のために――そう考える二人の名手の挑戦に終わりはない。



