メンタルの調子を崩す人はどんな家に住んでいるのか。宅建士資格を持つ産業医の森しほ氏は「メンタル不調で受診される方に生活環境を伺うと、リビングにある共通点が見つかることが少なくない。もし同じような家に住んでいる場合、知らないうちに心の負担が増えている可能性がある」という――。
青空の下の住宅街
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メンタルと深いつながりのある「住まい」

ゆうメンタルクリニックの医師、森しほです。産業医として、働く方のメンタルヘルス相談に携わっています。また宅建士の資格も持っており、「住まい」の視点からも心の健康について考えてきました。

うつ症状や適応障害などでつらさを抱えている方のお話を聞いていると、「病気そのもの」だけではなく、「帰宅してから休めない環境」に苦しんでいる方が意外と多いことに気付きます。

家は、本来なら心を回復させる場所です。しかしそこで毎日小さなストレスが積み重なっていると、知らないうちに心の回復を邪魔してしまうことがあります。

もちろん、うつ病や適応障害などの疾患は、住まいだけが原因で起こるものではありません。仕事のストレス、人間関係、体調や睡眠、考え方の傾向など、さまざまな要因が重なって起こります。ただ、毎日過ごす住まいが、知らないうちに心の負担を増やしていることがあるのです。

住まいから「自己否定の連鎖」が起こる

たとえば「片付けにくい家」「動きにくい家」「家事のたびに小さなストレスが積み重なる家」に住んでいないでしょうか。こうした家にお住まいだと、

「帰宅した瞬間に散らかった部屋を見て、もう何もしたくなくなる」
「家族に申し訳なくて、心が苦しくなる」

といった自己否定につながりやすくなります。

そして、この自己否定の積み重ねがあなたの気力を奪ってしまいます。「片付けられない」→「自分はだらしない人間だと思う」→落ち込む→ますます動けなくなる、という悪循環に陥ってしまうのです。

もともと強いストレスを抱えている方の場合、こうした日々の小さな負担が積み重なることで、気分の落ち込みや意欲低下につながります。最悪の場合には、うつ症状などのメンタル不調を引き起こしたり、悪化させたりする要因になる可能性もあります。

実際に、うつ症状があり「自分は何もできない人間になってしまった」と自分を責めていた方のお話を詳しく聞いていくと、本人の性格や努力不足ではなく、住環境が大きな負担になっていた、というケースがあります。

では、メンタル不調を引き起こしやすい住まいの特徴と、心が疲れている時でも少しラクに暮らすための工夫についてお話ししたいと思います。