生物が本来持っている力は何か。京都大学前総長の山極寿一さんは「私がまだ若かりし頃、アフリカのガボン共和国の熱帯雨林で死にかけた。しかし、サバイバルを『苦難』ではなく『遊び』として捉え直したとき、人間の内側に本来眠る、生き抜こうとするポジティブな力が目覚めた」という――。
※本稿は、山極寿一、田島木綿子『人間が失いかけた ゴリラ・イルカの仲間を信じる力』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
ジャングルで経験した生物本来の力
実は私がまだ若かりし頃、アフリカのガボン共和国の熱帯雨林で死にかけたことがあります。1983年のことです。ゴリラの調査中に深い森の中でルートを見失い、私は二晩、ジャングルを彷徨うことになりました。
ゴリラの調査はふつうは現地の森をよく知っているアシスタントと一緒に行います。でも、私は一人でゴリラの群れの中に入ることが好きだったので、よくアシスタントを連れずにゴリラに会いに行きました。
ゴリラは毎日食物を探して森を広く歩き回ります。どこへ行くかはゴリラ次第で、ときには私の知らない方向へ移動してしまうことがあります。
私はなるべく長くゴリラの行動を見ていたかったので、暗くなり、キャンプへ戻ることができなくなったことが何度もあります。そんなときはむやみに動かずに木の洞などに身を隠し、朝になって日が昇ってから歩き出すことにしていました。

