移動で許容できる所要時間はどれくらいか
大阪府吹田市・豊中市にまたがる千里丘陵に千里ニュータウンが誕生したのは1962年。日本初とも称される同ニュータウンは、すでにまちびらきから60年以上が経過した。都市圏郊外に誕生したニュータウンは、その後も東京圏には多摩ニュータウン、横浜圏には港北ニュータウン、名古屋圏には高蔵寺ニュータウンと、続々と造成されていった。
ニュータウンに入居した住民の多くはサラリーマン世帯で、まちびらきと同時に入居してきた家族は20代後半から30代が大半を占めた。歳月の経過は同時にニュータウン全体の高齢化と直結する。こうした現況から、オールドタウンなどと揶揄する向きも出てきた。
高齢化が猛スピードで進展し、近い将来に立ち行かなくなる危険性が高まるニュータウンは数えきれない。そうしたニュータウンのなかには昭和期に行政が積極的に開発に関与したケースも目立つ。
行政が関与したニュータウン開発は、住宅や公民館やスーパーといった生活関連施設だけではなく、公共交通もセットで整備されることが多かった。なかでも行政が固執した公共交通は“鉄道”だった。
ニュータウンの盛衰は何よりも時代に即した変化ができたかどうかという点に尽きる。それを如実に表しているのが公共交通で、端的に表現するなら、「許容できる所要時間」と「乗り換えなどの手間」が時代に適合したニュータウンが生き残れたという、身も蓋もない結論になる。
髙島屋、大型スーパーより重視されるもの
千里ニュータウンは、北大阪急行電鉄(北急)や阪急電鉄千里線といった鉄道が域内を走っている。北急はOsaka Metro御堂筋線と相互直通運転をしているので、千里ニュータウンから大阪駅まで乗り換えることなく20分前後で移動できてしまう。
一方、同じ大阪府内でも堺市・和泉市にまたがる泉北ニュータウンは繁華街の難波駅・天王寺駅まで約40分を要し、どうしても遠いという印象を抱かせてしまう。それが新たな転入者を遠ざけている。
泉北ニュータウン内には、まちびらき当初から髙島屋が店舗を構え、大型スーパーも多く立地している。生活インフラの充実ぶりは申し分ないが、そうした配慮は新たな住民を呼び込む訴求力として弱い。結局のところ、遠いという理由がニューファミリー層から敬遠される。
他方、近距離にある千里ニュータウンは新陳代謝がうまく進み、昨今は千里ニュータウン以遠でもニューファミリー層の流入が進む。沿線の宅地化を受けて、北急は2024年3月に千里中央駅から箕面萱野駅までを延伸開業。この延伸開業は、さらなるファミリー層の流入を促進することになった。
所要時間に対する捉え方は地域によっても異なる。東京圏では多摩ニュータウンから新宿駅までは約40分、東京駅までは約60分となる。約60分の所要時間はギリギリ許容範囲内だが、それでも遠いというイメージからファミリー世帯の流入は思わしくない。
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