信頼される話し方と、そうでない話し方は何が違うのか。スピーチコンサルタントの阿部恵さんは「人は声を聞いただけで、明確に『好き・嫌い』といった感情を抱く。例えば田中角栄氏の声は、しばしば『ダミ声』と表現されるが、実際には、高周波成分を含んだ非常によく通る声だった。その背景には、幼少期の経験が関係している」という――。

※本稿は、阿部恵『一目置かれるリーダーの戦略的話し方』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

首相就任時の田中角栄
首相就任時の田中角栄(画像=内閣官房内閣広報室/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

人は「声」で相手の好き・嫌いを判断する

同じ言葉でも、「この人の話なら信じられる」と感じる場合と、「なぜか引っかかる」と感じる場合がありませんか?

その違いは、話の内容というよりも、実は、「声」そのものにあります。

たとえば、いわゆる「営業用の声」を想像してみてください。

明るく丁寧で、語尾も柔らかい。話し方としては整っているはずなのに、どこか不快に感じたり、「本心ではなさそうだな」と距離を感じたりすることはないでしょうか。

一方で、厳しい言い方をされているのに、「この人の言うことなら受け止めよう」と前向きにとらえられる場合もありますよね。

その違いについて、声と音の専門家である山﨑広子氏は著書『相手に届き、自分を変える 心を動かす「声」になる』(大和書房)の中で、声のタイプがまるで異なる2人に同じ言葉を発してもらい、「人が声だけでどのような印象を持つか」という興味深い実験を紹介しています。

その結果、人は声を聞いただけで、明確に「好き・嫌い」といった感情を抱くことがわかりました。同じ言葉であっても、「好きな人の声で言われるか」「嫌いな人の声で言われるか」によって、受け取り方がまったく変わってしまうというのです。

これは感覚的なものではありません。

神経科学の研究では、言葉の意味は主に大脳の表層部で処理される一方、声や音は、扁桃体など脳の深部にも直接届き、「好き・嫌い」といった感情評価に関わることがわかっています。

つまり、人は、内容を理解する前に、まず声で「この人は信頼できるか、できないか」を、ほぼ無意識のうちに判断しているのです。