※本稿は、物部真一郎『最新科学でわかった! 気分のいい人がうまくいく』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
マルチタスクで発生する見えないコスト
午後、ピッチ資料を書いていると、Slackの通知が鳴る。「ちょっとだけ」と返信する。書く作業に戻ろうとすると、メールも来ている。それも処理する。また戻ると、Slackで返信が来ている……。
気がつくと夕方になっていて、資料はほとんど進んでいない。それでも疲れている。これは、現代の働き手のほぼ全員が経験していることだと思います。
この疲労の原因は、私たちの脳が「マルチタスク」を苦手としているからです。
正確に言うと、本当のマルチタスクなどできておらず、できているのは「高速なタスクスイッチング」だけです。
そして、そのスイッチングには、見えないコストがかかります。これは「注意残余」と呼ばれます(※1)。
タスクAを中断してタスクBに移ると、Bに集中しているあいだも、注意の一部はAに残ったままになります。Aを「ちゃんと終えた」感覚がないと、この残余は長く続きます。
だから「Slackで会話しながら資料を書く」状態は、両方の質を確実に落とし、終わったときに「疲れた割に進んでいない」という感覚を残します。
ある研究では、金融アナリスト、開発者、マネージャーなど主に情報を取り扱う労働者は、平均すると約11分に一度、別の作業領域へ移るか、作業を中断していました。さらに、いったん中断された作業に同じ日のうちに戻るまでには、平均で25分以上かかっていました。
中断の種類によっては、「ちょっと見るだけ」のつもりが、その後20分以上、自分の注意を別の場所に置いてくることにもなります。効率が落ちてしまいますね。
※1 Leroy, S. (2009). Why is it so hard to do my work? The challenge of attention residue when switching between work tasks. Organizational Behavior and Human Decision Processes, 109(2), 168-181.

