適性を見極め、幸せに働くにはどうすればいいか。立命館アジア太平洋大学前学長・名誉教授の出口治明さんは「自分の『適性』に合う場所を求めてさまようより、たまたま縁あって入ったいまの場所に自分を『適応』させることを考えたほうがいい。ただブラック企業のような職場環境で無理に適応してはいけない」という――。

※本稿は、出口治明『誰も行ったことのない場所へ行こう。そして誰もやらなかったことをやろう。』(祥伝社)の一部を再編集したものです。

コンピュータを使用する女性IT開発者
写真=iStock.com/SeventyFour
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「自分」へのこだわりが強い人が多い

「自分らしい働き方」「自己実現」「自己肯定感」「自己成長感」などについて、よく相談を受けます。意欲を持つのは素晴らしいのですが、果たして、「自分らしさ」「自分のやりたいこと」というのは、そんなに簡単にわかるものなのでしょうか。

今回は、「適性」について、僕の考えをお伝えしてみたいと思います。

社会人として働き始めた当初はひたすら緊張していた人も、しばらくして少し気持ちに余裕が出てくると、「この会社は自分に合っているんだろうか?」という疑問を抱くことがあるのではないでしょうか。

与えられる課題の難しさ、上司や同僚との人間関係、あるいは忙しくて自分の時間が持てない……など、社会人の日々にはいろいろなストレスがあります。

そのために居心地が悪くなり、「この職場は自分に向いていないかもしれない」と感じる面もあるかもしれません。「自分の適性に合った仕事をしたい」「自分らしい働き方をしたい」といった気持ちが強い人も多いでしょう。

若い人ほど自己責任論の影響を受けているように思います。それに加えて、「自己実現」「自己肯定感」「自己成長感」を求める人も少なくありません。

「自分」へのこだわりが強い人が多いように僕には見えます。だから、職場で強いストレスを感じると、「自分」のやりたいことができていないように思えてくるのではないでしょうか。

でも、自分の思いどおりになることなど、僕たちの人生にはほとんどありません。人生のスタートからしてそうです。「自分はこの時代のこの国に生まれるのが向いているはずだ」などと選んで生まれてきた人はひとりもいません。

僕もあなたも、たまたま20世紀から21世紀にかけた時代の日本で人生を始めました。その段階から、人間が生きる環境は運と偶然で決まるのです。