女性のウィッグ需要はコンプレックスに非ず
「かつらは男のもの」――その常識は、もう崩れている。
実はアデランスは、現在女性用毛髪業市場においてシェア1位となっている(*1)。女性たちの間では、「ウィッグはもはや、日常使いのもの」であるらしい。
これを聞いて驚く男性は、少なくないのではないか。テクノロジー活用で人工毛髪はじめ、ウィッグのレベルはすさまじいほど高くなっているが、それを軽やかに受け入れてきたのが女性、と言えるのかもしれない。
なぜ、逆転現象は起きたのか。
「きっと、自分の変化を自然に受け入れるからではないでしょうか。年齢とともに髪の毛が細くなったり、抜けてしまったり、という悩みを女性からお聞きすることは日常茶飯事です。ちっとも、不思議なことではありません。また、若い頃は出ていたボリュームがなかなか出せなくなった、という声も耳にします。梅雨の時期などに、思うようにスタイリングができないというお悩みもあるようです。そこで前髪から分け目までの商品をちょっとつけてみたり、後ろのボリュームをアップしたり。女性の方たちは、ウィッグの活用がとても上手なんです」
こう語るのは、アデランス商品研究開発部長の川﨑むつみさん(58歳)だ。
社歴はすでに40年。ウィッグ製造の現場からキャリアを始め、商品開発へ。女性用製品の担当になって、もう20年近くになる。女性のウィッグニーズは、実は髪のコンプレックスに限らないという。
「ちょっとスタイルを変えたい、と大きなサイズをお求めになったり、思い切って色を変えてみたい、といった声もあります」
*1 女性用毛髪業(かつら・増毛、育毛サービス及び関連商品等を含む)市場(事業者売上金額ベース 矢野経済研究所調べ/2025年10月現在)
創業者が女性のニーズを知っていたワケ
アデランスの女性向け製品の売り上げが男性向けを超えたのは、2000年代。すでに20年以上経つ。背景にあるのが、ウィッグの質の高さだ。人気商品は、つむじ周りの気になる部分を根本から自然につくる「オーダーメイド・ウィッグ」。20万円弱からの価格帯だが、顧客は絶えない。
「実は、せっかく新しいウィッグをつけてきたのにお友達に気づいてもらえなくて、なんて話を聞くことがあります。誰も何も言ってくれないので、自分のほうから明かしちゃった、とか」
自分からウィッグについて語る女性が多いのだ、と川﨑さんは微笑む。しかも、それを聞いた周囲の反応は、「へえ、素敵ね」「どこで買えるの?」だったりするのだそうだ。
「初めてお会いした人とでも、そういう会話は普通に起きるそうです。お友達同士、揃ってウィッグの試着に見える方もいらっしゃいます」
女性向けマーケットの大きさを知っていたのは、創業者だった。実はもともと女性用ウィッグを扱う会社で働いていたという。男性の髪の悩みの強さから、男性向けで事業を始めたが、女性がウィッグをつける習慣があることを知っていた。女性がこの市場に親和性が高いことに気づいていたのだ。
「それこそ『美容室に行く時間がないからウィッグで』、という方もおられます。洋服を替えるように、ウィッグ一つで全体の雰囲気を変えることができますから」


