あまりにも身近な日用品の商品名を知らないことがある。救急絆創膏もその1つだろう。現在、国内で売上数量トップのニチバン「ケアリーヴ」は、知名度より先に功績が勝った。長年業界を制覇していた「バンドエイド」をどのように抜いたのか。同社執行役員の富田英樹さんは「なにしろ競合相手がかなり強力だったので、こちらは消費者目線に徹底できた。競った、という感覚はない」という――。(前編/全2回)

救急絆創膏のことを何と呼ぶか

「バンドエイド、ありますか?」

ドラッグストアで救急絆創膏(以下、絆創膏)を探すとき、多くの人が無意識にそう言う。

だが実は、「バンドエイド」は商品名にすぎない。アメリカ発のブランド名だ。それが今や、絆創膏というモノ自体の名前として定着している。しかしその呼び名は日本のエリアごとに異なるらしい――こんな話題が、年に何度かSNSでバズるという。

たとえば北海道では「サビオ」、九州では「リバテープ」、北陸なら「キズバン」、関西や関東では「バンドエイド」、そして東北、中国地方と、なぜか埼玉では「カットバン」。「サビオ持ってない?」と北海道出身者に聞かれて、「え? 何それ」と反応してしまう東京人もいるそうだ。

そんな業界に、静かな地殻変動が起きていた。

2024年より、絆創膏市場の国内売上数量第1位の商品が、ニチバンの「ケアリーヴ」シリーズに取って代わっていた(*1)。同社ヘルスケア部門の売上高約152億円のうち、「ケアリーヴ」は前年同期比で+9.4%(2025年3月期)。まさに社の中核に成長しながら、市場も牽引している絆創膏なのだ。

「ケアリーヴ」の発売は1997年である。それから30年も満たずして、アメリカのヘルスケア企業ケンビュー(ジョンソン・エンド・ジョンソンから分社化)の「バンドエイド」から、トップの座を奪った日本の老舗ニチバン。はたして勝因は、何か。さっそく東京・麹町の本社を訪ねた。

*1 インテージSRI+「絆創膏市場シリーズ計2024年4月~2025年3月」販売数量

なぜ戦わずして勝てたのか

「いやぁ、いつの間にかトップになっていたんです」

迎えてくれたのは、富田英樹さん(53歳)。1994年に入社し営業として発売当初から「ケアリーヴ」に携わり、現在はブランド全体を率いるニチバンの執行役員。やわらかな笑顔のリーダーだ。

「最近よく売れているなぁと思ってつくづく調べてみたら、2024年に売上数量が1位になっていました」

老舗の貫禄にいささか拍子抜けもしたが、次の言葉に頷かされる。

「競合の『バンドエイド』と圧倒的な売り上げの差があった時代を知っていますから、まさか追いつき、しかも追い越す時代が来るとは想像もしておらず……。ついにここまで来たか、という感慨があります」

富田さんはさらに続けた。

「発売前から、高みを目指せたせいかもしれません。なにしろ競合相手がかなり強力だったので、こちらは消費者目線に徹底できた。作り手のわれわれが“使い手になりきった”ということです。競った、という感覚ではなく」

世界的“ガリバー”とは戦わなかった、と言う富田さん。では、どう戦わずして勝てたのだろう。話は30年前にさかのぼる。

「ケアリーヴ」の発売当初から営業として関わってきたニチバンの富田英樹さん
撮影=プレジデントオンライン編集部
「ケアリーヴ」の発売当初から営業として関わってきたニチバンの富田英樹さん