中東危機の長期化で心配される「原油不足」
中東情勢が緊迫化している。2月末から4月上旬にかけて、米国・イスラエルがイランを空爆する一方、イランはイスラエルや米軍が駐留する湾岸産油国を攻撃するなど、報復の応酬が続いている。足元では、米国とイランの間で停戦に向けた交渉が行われているものの、双方の立場の隔たりは大きく、合意には至っていない。海上石油輸送の要衝であるホルムズ海峡の封鎖も続いており、これが世界の原油供給を大きく制約している。
中東産原油の供給制約は、わが国経済に大きな影響を及ぼす。2025年の輸入実績をみると、わが国はアラブ首長国連邦(UAE)やサウジアラビアなどの中東の国々に原油輸入の94%を依存している。
ホルムズ海峡の封鎖によって中東からの原油調達が困難になったことに対して、政府は石油備蓄を放出して対応している。もっとも、4月27日時点で残っている備蓄は211日分であり、中東危機がそれよりも長期化すれば、わが国は原油不足に陥る。
原油不足によって石油製品(ガソリン、軽油、重油、ナフサなど)を国内で精製できなくなると、自動車の運転や工場の稼働などに必要な燃料が足りなくなり、経済活動に深刻な悪影響が生じる。
「米国産石油」の輸入拡大は可能なのか
とりわけ、石油化学産業が化学製品を作る際の原料として用いるナフサについては、すでに一部で供給が不足しており、製品価格の引き上げや納品の遅延が生じている。
こうした状況を受けて、中東産原油の代替調達先として米国への期待が高まっている。米国は、2010年代のシェール革命を機に原油生産量を急増させ、足元で世界最大の産油国となっている。3月19日に開催された日米首脳会談では、高市首相がアラスカ州など米国からの原油輸入を拡大するほか、日米間の共同備蓄を強化する方針を表明した。もっとも、以下3点の理由から、米国の石油企業がすぐに大規模な増産を行うのは困難とみられる。

