イラン国内に増殖している「癌」
国内では行き場を失った国民の怒りが噴出し、国外からはアメリカとイスラエルによる容赦ない軍事攻勢が続く。かつて中東の雄として君臨したイランのイスラム体制は今、建国以来最大の崩壊危機を迎えている。
イラン経済が長らく停滞し、国民が困窮している理由を問えば、多くの識者は「アメリカによる長年の経済制裁」を挙げるだろう。だが、その説明は現実の半分しか示していない。制裁はあくまで「外傷」であり、イランを「死」に至らしめようとしているのは、その内部で増殖した「癌」である。
イランのイスラム体制は、国民に帰属すべき石油収入を横取りし、国民のための水インフラを食い物にし、国家の通貨価値を崩壊させることによって、その延命を図ってきた。イラン経済を絶体絶命の淵まで追い詰めた真犯人は、「革命の守護者」を自称するイスラム革命防衛隊(IRGC)である。
日本の報道では、「なぜアメリカがこれほどまでにイランに対して怒っているのか」という本質が語られることは少ない。それどころか、アメリカが理不尽に中東の秩序をかき乱しているかのような解説がまかり通ることすらある。
そのバイアスを排さなければ、現在進行形で起きている事態の本質は見えてこない。
首都テヘランから水が消える
2025年の夏、イランの首都テヘランは「デイ・ゼロ(供給停止日)」の瀬戸際に立たされた。市内のダムや貯水池の貯水率は5〜10%という悲惨な数字にまで落ち込み、ペゼシュキアン大統領は「現在の水消費パターンが続けば、首都の機能を移転させる必要があるかもしれない」と警告を繰り返した。
事態は首都だけにとどまらない。南部の主要都市では週に2日しか水道水が出ず、テヘランの庶民街では、うだるような暑さの中、家族総出で給水車の前に数時間並ぶ光景が日常となった。
ここで直視すべきは、この「水不足」とアメリカによる経済制裁には、直接的な因果関係がない点だ。

