2022年2月から始まったウクライナ戦争で、ロシア軍兵士として戦った日本人がいる。戦場ではどんな戦いが行われていたのか。ロシア軍の特殊部隊「アフマット」に現在も所属している金子大作さんは「突撃部隊は白兵戦にたどり着く前に、ドローン攻撃や迫撃砲などで5割の兵士が殺傷される。一緒に戦った仲間たちも次々と死んでいった」という――。(第4回)
※本稿は、金子大作『ロシア軍の日本人兵士 最強の特殊部隊「アフマット」で見た地獄』(講談社)の一部を再編集したものです。
「ロシアに住む気はありますか?」
怪我をした僕を、司令官の一人はこう労ってくれた。
「私の家でのんびり過ごしたらいい」
お言葉に甘え、司令官の仮住まいでゴロゴロと寝て過ごす羽目になった。
「暇だったらこれでも撃って遊んでいたらどうだ?」
笑顔で手渡されたのは手榴弾。ロシア兵流のジョークに、苦笑いで返すほかなかった。
2週間後、歩ける程度に回復してからキャンプに戻ると、何やら慌ただしい。どうやら次の戦場が決まったようだ。ところが、アフマットの中隊最高司令官が気を遣ったのか、それともフォーメーション訓練が鮮烈だったのか、僕は「トレーナー(教官)」に任命された。戦うために戻ったのだから、自分として本望ではないが中隊最高司令官は頑なだった。
またあるときは、一つの質問をするためだけに司令官が現れた。
「家を買ってロシアに住む気はありますか?」
「生き残れたときはロシアで妻をもらうのが夢ですよ」
そう伝えると、何も答えずに帰っていった。将来もロシアに滞在する意思があるか司令官は確かめていたのだと思う。後に知るが、アフマットに入隊すると5年間は海外への渡航が禁止されていた。

