爆発すれば150メートルが炎に包まれる
さらなる脅威は、大型ドローン「バーバ・ヤーガ」だ。ウクライナ軍の主力ドローンとして真夜中に飛び交った。迫撃砲弾2個分の破壊力ある爆弾を搭載しているから、単純計算で150mの範囲がバーバ・ヤーガによって炎に包まれる。真上にポジションを取られると一巻の終わりだ。
僕は戦地でバーバ・ヤーガ撃墜の任務を通達され、真夜中に9時間ぶっ通しで廃屋などから狙っていた。バーバ・ヤーガ撃墜に成功したロシア兵はおらず、極めて難易度の高い任務だった。暗視スコープで狙いをつけてもバーバ・ヤーガは止まっているわけではない。進行方向に動く速度を計算した上で狙撃する必要があった。
バッバッバッバッ……プロペラの爆音が闇夜を切り裂いていく。肉眼では何も見えないから暗視スコープを覗くと、その姿が映し出される。
「パーン」
モーターに向かってトリガーを引いたが、どうやら外れたようだ。怖いのはその後だ。僕の居場所を気づかれて反撃に遭えば太刀打ちできない。距離にして数百m。あの腹に響くような爆音が近づいてくる。真上を通過するとき、恐怖感さえ覚える。息を潜めて通過するのを待つだけ。対抗する手立てはない。
可愛がっていた犬猫も爆撃で殺される
毎日9時間、ぶっ続けで暗視スコープでバーバ・ヤーガを探した。それに並行してカミカゼや投擲ドローンなど他のドローンの撃墜任務も遂行する。正直、日付の感覚さえなくなった。
仮眠しようと思うと司令官から指示が出て、1時間の仮眠のみで出撃。ようやく終えて帰ってきても睡眠は良くて2時間。また別の場所での任務を告げられた。常に戦っている感覚だった。休憩のはずが、任務を言い渡されて時間をほとんど失ったことも多々ある。
最前線から戻った兵士が休息場所に用いていた民家も迫撃砲で破壊され、兵士2名が死傷。その上、可愛がっていた野良猫のニャーコも巻き添えで死んだことを、任務から戻ってきてから知った。猫のため、墓を掘り、仲間と一緒に供養もした。
意外かもしれないが、兵士の多くは人間よりも動物に優しい。戦地となって飼い主が逃げたのか、それとも殺されたのかわからないが、戦地では飼われていた多数の犬や猫が野良になっている。腹を空かしたペットを見ると、餌を与えてみんなで可愛がった。猫や犬に触れている時間が、唯一の癒しだった。


