ドローンに24時間狙われ続ける

ブリンダッシュとは塹壕のことで、森で隠れ蓑とする簡易な休憩場所も同じようにブリンダッシュと呼ぶ。戦地の周りには民家も点在した。僕が仲間と活動拠点としていた民家は、最前線のブリンダッシュから1〜2km離れた場所にあった。

睨み合いが続き、白兵戦は起きない。しかしその代わりに、毎日のように敵の迫撃砲やドローン攻撃にさらされ仲間たちは神経をすり減らしていた。この地域を確保できれば、戦略的に大きな価値がある。ロシア側は、多額の費用をかけて多くの兵士と精鋭部隊を投入していた。

ただ、ウクライナも考えは同じで、「カミカゼ」と呼ばれるドローンを1日に5〜7機も飛ばして対抗してきた。2024年4月以降、戦地には熱感知機および暗視カメラを搭載したドローンが導入されるようになった。ウクライナ軍の最大の標的は、数百名いる兵士のなかで唯一の狙撃兵である僕だった。

この地域はロシア軍のドローン迎撃用の妨害電波システムがなかったため、ウクライナのドローンが24時間、好き勝手に飛び交っていた。ある日、戦闘中に腹の具合が悪くて公衆便所に駆け込んだことがある。

穴を掘ってあるだけのボットン便所で、踏ん張っていると迫撃砲弾が「ヒュイーン」という轟音とともに真上を飛んでいった。落ちた場所は目の前だった。もう少しで、便所で死ぬところだ。おそらく偵察ドローンに僕の行動が見られていたのだろう。

ウクライナの国旗とドローン
写真=iStock.com/Yurchello108
※写真はイメージです

戦場で恐れられる「4タイプのドローン」

敵のドローンを撃墜する任務を「アンチドローン」と呼ぶ。狙撃兵としてそれを任された僕は、ドローンの特徴を覚える必要があった。大まかに分けると、戦場では4タイプのドローンが飛び交っている。

偵察ドローン

戦場を監視し、拠点にライブ映像を送る。迫撃砲の着弾点や次に狙いをつける座標なども送信している。

カミカゼドローン

迫撃砲「RPG-7」などの砲弾を搭載して、文字通りカミカゼアタックをする。針金を機体に巻きつけており、その針金が接触すると電気が流れて起爆する。また、衝突時のスピードが足りなくても必ず爆発するよう、電気信号で起爆させることもできる。バッテリーを先に打ち抜けば墜落させても爆発はしない。

投擲型ドローン

カミカゼのように使い捨てではないため、「マビック」などの高価なドローンが使用されている。手榴弾程度の重さの爆弾を2個積載できる。5倍ズームの4Kカメラと熱感知カメラで人間を識別する。最大高度200mから爆弾を投擲。高性能爆薬「TNT」の周りに金属片を巻きつけて重量を保ち、爆弾を正確に目標へ落とせるよう計算されている。その代わり、本体は軽量化を図るべく3Dプリンターで作られている。

“魔女”と呼ばれるウクライナの独自兵器

バーバ・ヤーガ

スラブ民話の魔女の異名をとるウクライナ独自開発の大型ドローン。暗視カメラを搭載して深夜に飛行する。

最大15kgの弾頭が搭載可能で、対戦車地雷なども投擲できる。本体の腹下に防弾プレートがあり、プロペラは6つ。2つまでならプロペラが破壊されても飛行可能。撃墜するには飛行システムを司るパーツか、バッテリーを正確に撃ち抜く必要がある。

アウディーイウカの戦地は廃墟と化した焼け野原で、グレーと黒、茶色だけのコントラストだった。両軍が建物や塹壕に絨毯爆撃を仕掛け、破壊の限りを尽くしたからだ。ところが、ルガンスクではドローンが攻撃の主力となり、絨毯爆撃はほとんど見られなかった。

「自前でドローンを製造できるようになったから、ウクライナ軍は1万機のドローンを所有している」

ロシア軍ではこんな情報まで飛び交っていた。ドローンには飛行可能な範囲がある。この範囲とは操縦士から電波が届く距離を指しており、当時は操縦士から半径8〜9kmが飛行圏内だった。自動車は格好の標的であるため、物資の補給トラックは飛行圏外の待機が常識となった。兵士がトラックまで補給物資を取りに行き、80kg近い荷物を背負って戻らないといけない。