『左ききのエレン』作者・かっぴーさんに聞く「才能との向き合い方」前編
画像提供=MEETS CAREER by マイナビ転職

「自分には、突き抜けたものがない」

仕事をする中で、そう感じる瞬間が誰にでもあるのではないでしょうか。

同じ職場に、同じ職種に、明らかに自分とはレベルの違う人を見つける。そのたびに、自分より優秀に見える人と比較して、自分の可能性を小さく見積もってしまう。

『左ききのエレン』は、広告業界を主な舞台として、絵の天才・エレンと、その才能に憧れながら働くクリエイター・朝倉光一の葛藤を描いた作品です。「天才になれなかった全ての人へ」というキャッチコピーのもと、才能との向き合い方を問い続けています。

作者のかっぴーさんもまた「天才ではない自分」を受け入れ、折り合いをつけながらキャリアを積み重ねてきたと言います。

今回はそんなかっぴーさんに「才能との向き合い方」というテーマでインタビューしました。

前編では、会社員時代の話を伺います。語られたのは、手持ちのカードを冷静に分析して自分が輝ける場所を探すキャリア戦略の話であり、同時に「会社員時代のメンタリティは、あまりよくなかった」という率直な自己批評でした。

かっぴーさん
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かっぴーさん。漫画家/漫画原作者。1985年、神奈川県生まれ。株式会社なつやすみ代表。武蔵野美術大学卒業後、東急エージェンシーでアートディレクター、面白法人カヤックでプランナーを務める。会社員時代に描いた『フェイスブックポリス』が話題となり、2016年に漫画家として独立。『左ききのエレン』『大人大戦』を連載中。

「チェックポイント」や「ロールモデル」が欲しかった

――『左ききのエレン』は非凡さ・平凡さを対比させながら進む物語で、著書でもご自身のことを「天才ではない」と書かれています。才能を主題とした作品づくりを続けてきたかっぴーさんが「自分は天才じゃないな」と感じたタイミングはいつだったのでしょう?

僕はエレンのような圧倒的な天才と出会ったわけではないのですが、自分より絵の上手い人は周囲にいくらでもいたので、学生の頃からうっすら気づいていました。

『左ききのエレン』に登場する絵の天才・エレン
『左ききのエレン』に登場する絵の天才・エレン。©︎kappy2018/ナンバーナイン(画像提供=MEETS CAREER by マイナビ転職)

なりたい職業として「漫画家」と書いたことはありましたし、映画監督や脚本家を目標にしていた時期もあります。でも、そういう人たちにどうやったらなれるのかが分からなかったんです。かといって特に行動を起こすわけでもなく、自分は「そっち側」じゃないと勝手に思っていた。

――そんなかっぴーさんが今漫画家になっているのが興味深いですよね。ただ以前は、漫画家の道は選ばないほうがいい、と思っていたと。

はい。漫画家や映画監督の仕事って明確なキャリアパスがない「ひたすら暗闇を行く」ようなイメージがあって。単純にその世界へ一歩踏み出すのが怖かったんだと思います。

自分としては、たどり着くまでのチェックポイント(物事を進めていく上で節目となる点)やロールモデルがもう少し欲しかった。

その点、(会社員時代の職業である)広告代理店のデザイナーやアートディレクターに関しては、自分なりにチェックポイントも目指すべき人物像も見えていたんです。例えば、美大に入ってしかるべき成績を取って、代理店に入って、そこで広告の賞を取る、のような。もちろんこちらはこちらで険しい道のりですが、チェックポイントがある程度分かっているので、目標に近づいている実感もあるのではないかと。