真夜中まで戦闘が続き、睡眠時間は3時間
そんな事情もあってルガンスクでは暗視ゴーグルの配給が遅れ、その隙をウクライナ軍は突いてきた。
夜襲を頻繁に仕掛け、真っ暗闇での戦いを強いられて多くの仲間たちが亡くなっていった。ドローンの革新的な進化と攻撃の多様化で、ロシア軍は大打撃を被っていた。
最前線で戦闘を始めると、任務を終えるまでブリンダッシュで何日も過ごす。4日連続でブリンダッシュがカミカゼに攻撃されて、そのたびに兵士が亡くなっていた。僕はAK-74で4機、5機とドローンを撃墜したが、すぐに新たなドローンが投入されて終わりの見えない戦いが続いた。
ルガンスクでは24時間、常に戦闘状態だった。夜は夜で暗視・赤外線カメラを搭載したドローンが飛び、体を休める時間はまったくなかった。最前線に出ると、ロシア軍では1時間に1度、無線で現状報告する規則がある。生存確認と戦況を司令官に伝えるためだ。寝てしまって報告できなかった兵士には罰則が科された。仲間の一人は無線連絡を怠り、司令官から罰として携帯電話を取り上げられた。
睡眠時間はせいぜい一日3時間。長くても5時間ほど。取れたとしても1時間おきに起きて現状報告する義務がある。
時速120kmで突っ込んでくる
戦場のストレスはそれだけではなかった。汗まみれのまま、ブリンダッシュの土の上に体を横たえる。風呂は1カ月に1度、野池で汗を流すことぐらいだ。水は貴重で体を拭くことさえ許されず、たまの洗濯も野池に衣類を持ち込んで行った。
当然ながら睡眠中が一番敵から狙われやすい。カミカゼドローンは200m上空から対象物を探し、発見すると急降下。時速80〜120kmで一直線に対象物に向かってくる。
人間の五感で感じ取れるのは100m先が限界で、200m先では音も聞こえなければ肉眼でも確認できない。しかも、100m先で確認したら、50m以内に近づくまでに撃墜しなければならない。ドローンに接近を許すと、破壊しても搭載された迫撃砲の爆発で自分も巻き添えを食らうからだ。
50m以内にカミカゼが迫っている場合は、バッテリーの位置を正確に撃ち抜き、爆発させないようにするしかない。ドローンが発するわずかな風切り音を聞き逃すと、致命的な代償を払うハメになる。
ドローンを発見して3〜4秒間、このわずかな時間に狙いを定めてドローンを破壊する。1〜2発の弾丸を放つ猶予しかない。大半の兵士は撃墜する技術を持っていないから闇雲に銃をぶっ放すか逃げ惑う。こうして多数の兵士がカミカゼの餌食になった。

