トランプ政権が潰したかった最大の敵
組織がガタガタになったイランは、4月に入るとアメリカ側に停戦を求め、2週間の限定的な停戦が実施された。一見、アメリカに勝ちを譲ったかにも見えるが、イランはホルムズ海峡を握り続けることで、実質的な主導権を手放していない。このしぶとさこそが、日本の電気代や物価高を長引かせている。
アメリカがイランを攻撃した最大の理由は「核開発の阻止のため」である。イランが核を保有すれば中東全体に核拡散が連鎖し、イスラエルの存在、ひいては世界のエネルギー秩序が根底から覆る。アメリカにとって譲れないレッドラインだ。
だが、トランプ政権が「最大圧力」と称して展開した制裁の本質的ターゲットは、この革命防衛隊という「収奪のコングロマリット」だった。
国民から奪った富を、自国のインフラ整備ではなく、中東全域を不安定化させるテロ資金に注ぎ込む。この構造は、人民を飢えさせてミサイルを撃つ北朝鮮と何ら変わりはない。
ベッセント財務長官は「イランの弱体化した経済を、再起不能なまでに崩壊させる」と公言し、石油密売網、ドバイの両替商、香港のフロント会社を執拗に潰していった。これは単なる嫌がらせではなく、テロの「兵糧」を断つための外科手術だった。
「イラン国民を解放」が大義名分に
アメリカの怒りの正体は、イラン国民から収奪された資金が、ヒズボラやフーシ派を通じてアメリカの利益と自由航行を脅かしていることへの、戦略的な「憤り」である。トランプ大統領がこの軍事作戦を「イラン国民を解放するためだ」と称したのは、多分にプロパガンダ的ではあるが、ある一点において真実を突いている。
イラン国民が水不足に苦しみ、貯蓄を失い、職を失う一方で、その元凶である革命防衛隊が中東全域を火の海にしていたからだ。2026年1月に再燃したイラン国内の反政府抗議運動は、水不足と食料価格高騰が引き金となった。トランプ政権は、この民衆の悲鳴を軍事介入の強力な大義名分とした。
石油で収奪し、水問題でその無能をさらし、通貨崩壊で国民を追い詰めた。そして最後に、自分たちの生命線であるドバイを自らミサイルで焼き払った。革命防衛隊という名の「捕食者」は、宿主を食い尽くした後、ついに自分自身を食い始めたのである。
最高指導者アリ・ハメネイ師の死亡後、その息子であるモジタバ・ハメネイ師が実権を握りつつあるが、彼もまた「アメリカのない未来」を掲げて強硬姿勢を崩していない。トップの首がすげ替わろうとも、革命防衛隊が作った「捕食のシステム」は容易には解体されない。
豊かな歴史、洗練された文化、そして強固な産業力を持つはずのイランという国が、なぜこれほどまでの悲劇に見舞われなければならなかったのか。その答えは、国家を守るべき盾が、国家を食い物にする牙へと変わってしまったからである。

