「自分の財布」を焼いたドバイ攻撃

2026年2月28日、米・イスラエルの軍事作戦によってハメネイ師の死亡が報じられると、逆上した革命防衛隊はドバイを含むアラブ首長国連邦(UAE)に向け、165発の弾道ミサイルと500機以上のドローンを放った。超高層ホテル「ブルジュ・アル・アラブ」が炎に包まれ、ドバイ国際空港が損傷した。自分たちの個人資産が眠り、組織の金融インフラが置かれた都市を、自ら破壊した。

2017年3月20日、イランの最高指導者、アリ・ハメネイ師
2017年3月20日、イランの最高指導者、アリ・ハメネイ師(写真=khamenei.ir/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

この行動はあまりに愚かだ。指導部が斬首され、情報部門が麻痺し、派閥抗争が激化した組織は、かつての精緻な戦略判断能力を完全に喪失していた。

世界を震え上がらせた精鋭軍「コッズ部隊」の巧妙さは、ガセム・ソレイマニという伝説的なカリスマ軍人と、彼が20年かけて築いた人間関係に依存していたに過ぎなかった。システムではなく「個人」に依存した組織は、カリスマを失った瞬間、自国を支える「財布」に火をつけるほどに劣化していた。

国民が苦しむほど、革命防衛隊は潤う

ここまで読み進めた読者は、「革命防衛隊は、国家に寄生する既得権益集団ではないか」と感じるだろう。だが、政治学用語を借りれば、彼らは「寄生」よりもさらに苛烈な「捕食国家(Predatory State)」だ。

通常の寄生は、宿主を生かしながら養分を吸う。捕食は、宿主を弱体化させることそのものが、支配を強化するプロセスとなる。革命防衛隊は国家にとって明らかに後者である。

水が不足すれば、巨大なダム建設の口実ができる。通貨が崩壊すれば、闇の両替ネットワークを独占する革命防衛隊の優位性が増す。外資系企業が制裁で撤退すれば、空いた市場を「抵抗経済」という美名で革命防衛隊系企業が独占できる。国民が苦しみ国家が疲弊すればするほど、革命防衛隊の利権は拡大する。

この構造が最終的に自壊したのは、外敵の攻撃だけが原因ではない。宿主であるイラン国民を弱めすぎた結果、国家そのものの抵抗力が尽き果てたのだ。GDPの半分近くを掌握しながら、いざ実戦となれば、その防衛能力は驚くほど脆弱だった。

ハタム・アル・アンビヤーに蔓延する「工費水増し」「粗悪工事」の文化は、兵器開発や軍事訓練という、ごまかしの効かない領域にまで浸透していたのである。