「失われた30年」で就職に苦労し、女性の約3割が子どもを産んでいない氷河期世代。甲南大学マネジメント創造学部教授の前田正子さんは「この世代は非正規雇用になった人が多く、恋愛や結婚をしたい20~30代の時期に将来への展望を持てなかった」という――。
リクルートスーツに身を包んだ就活中の学生たち
写真=iStock.com/b-bee
※写真はイメージです

氷河期世代の不遇が少子化を速めた

日本の少子化がここまで進んだ大きな要因としては、団塊ジュニアとポスト団塊ジュニア世代の未婚化が進んだことが挙げられます。この世代は1970年〜84年ごろに生まれて異常な就職難の時期に学卒者になった、いわゆる「就職氷河期世代」です。

前回の記事では、日本の1975年生まれの女性の無子比率が世界一高いことや、少子化の現状とこれからについてお話ししました。今回は、特に就職氷河期世代の女性が歩んできた道のりに焦点を当てたいと思います。この世代の不遇こそが、現在の少子化加速を引き起こしていると思うからです。

この世代、団塊ジュニアとポスト団塊ジュニアは、出生数が過去最高の200万人を超えた年もあり、特に人口が多い。本来なら第3次ベビーブームの担い手だったにもかかわらず、就職活動の時期がバブル崩壊後の経済停滞期だったために、雇用情勢の極端な悪化とそれに伴う経済的不安に見舞われました。

90年代後半には、大学卒業生の2〜3割強が無業かアルバイトのまま卒業しています。そのため、非正規雇用からスタートせざるを得なかった女性も多く、その後の賃金や職業生活において、卒業後すぐ正社員になれた人との間に大きな格差が生まれることになりました。

【図表1】1991年と2000年の大学卒業生の男女別進路
出典=『子どもの消えゆく国で』(岩波書店)

9割の女性が結婚しようと考えていた

それでも当時は、調査によれば9割の女性がいずれ結婚しようと考えていました。しかし、不安定雇用の人が増える中で未婚率は上昇。結果として、1975年生まれの女性の3割近くが生涯無子となっています。

こうした若者の雇用劣化に対し、国は2000年代に入っても有効な手を打ち出せませんでした。両立支援制度や保育サービスなどの充実には取り組み始めましたが、その恩恵を受けられたのは大企業の正社員などほんの一握りの人たちだけ。契約社員や派遣社員のほとんどは適用外でした。

非正規雇用の女性の多くは産休や育休も使えず、保育園への入所も難しかったのです。そんな状況では、妊娠は退職、すなわち無職・無収入になることを意味します。

いったん無職になってから出産後に再度求職活動をしようと思っても、そこにもまた高い壁がありました。保育園は仕事が決まってからでないと申請を受け付けてくれない、でも保育園が決まらないと内定が取れない。そんな地獄のようなループが待ち受けていたのです。