日本企業が寡占する「電子産業のコメ」
「今我々が目にしている量(需要)は、怖いくらいです」
東証プライム上場のセラミックコンデンサー大手、太陽誘電の佐瀬克也社長は自社に殺到するAIサーバー向け部品の注文について、ブルームバーグの取材でそう表現した。
「1社でもつまずけば、たちまち追いつかなくなりかねないほど、プレッシャーは極めて強い」と続ける。
同社が手がけるのは、積層セラミックコンデンサー(MLCC)と呼ばれる部品だ。1個のサイズは米粒より小さいが、電子機器内で電気の流れを安定化・制御する欠かせない役割を担う。
香港英字紙のサウスチャイナ・モーニングポストが、「電子産業のコメ(The ‘rice of electronics‘)」と評するように、スマートフォンから電気自動車(EV)まで欠かせない存在だ。
いま、生成AIが膨大な演算量を必要としていることで、MLCCの需要は急速に伸びている。世界各地でAIデータセンターの建設が急ピッチで進むなか、この小さな米粒大の部品が、新たなボトルネックになりつつある。
MLCC市場全体では、村田製作所が約4割で世界最大手、韓国のサムスン電機が2割前後で続き、太陽誘電は1割前後にとどまる。だがAIサーバー向けの高性能品に絞ると、勢力図は入れ替わる。ブルームバーグは、「太陽誘電と村田製作所が、世界の高性能MLCC供給の大部分を占めている」と述べ、日本の2社の存在感の大きさに言及している。
スマホに1000個、AIサーバーに2万8000個
サウスチャイナ・モーニングポストは、AIサーバー1台に必要なMLCCは最大約2万8000個にのぼり、標準的なサーバーの約13倍に達すると指摘する。スマートフォン1台あたりに搭載される800〜1000個と比べれば、約30倍にあたる。
なぜ、これほどの量が必要なのか。AIサーバーで主な演算処理を担う半導体チップ「GPU」は、演算時に大量の電力を瞬時に消費し、電圧が急激に変動する。
この変動を吸収するため、GPUのすぐそばにMLCCを大量に配置して電圧を安定させる「デカップリング」が欠かせない。GPUの演算能力は世代ごとに向上し、電圧変動の幅も拡大するため、搭載すべきMLCCの数は世代交代のたびに急増するわけだ。
例えばGPU最大手・エヌビディアの前世代製品「GB200」は1枚のボードにMLCCを6500個搭載していた。現行世代の「GB300」を挟み、今年後半に登場予定の次世代「Rubin」では1万2000個と、2世代でほぼ倍増する見込みだ。
エヌビディアと並ぶ半導体大手のAMDでも、MLCCの採用が急速に進む。台湾ハイテク市場調査会社のトレンドフォースによると、AMDは次世代プラットフォーム「MI450」の検証段階で、部品表に含まれていたアルミ電解コンデンサーとタンタルコンデンサーをすべてMLCCに置き換えた。その結果、ボード上に使われる特定仕様(47μF 2.5V X6S 0402)のMLCCは1440個から1万544個へ、約7.3倍に急増した。
関連して、運転のアシスト機能の搭載が進む自動車分野でも、高性能MLCCの需要は大きい。村田製作所は、「レベル2」(車線維持や加減速の補助)以上の自動運転機能を持つEVでは1台あたり1万個超のMLCCが使われると説明する。

