小型化と高性能化を両立した「世界初」の技術
両者の圧倒的な地位を支えているのは、相次いで確立された高いレベルの量産技術だ。
村田製作所は2025年7月、1005ミリサイズ(1.0×0.5mm)で静電容量(コンデンサーに蓄えられる電荷の量を示す値)47μFのMLCCの量産を開始したと発表した。
同じ47μFを実現していた従来の0603インチサイズ(1.6×0.8mm)品と比べ、実装面積の約60%削減に成功している。1005ミリサイズの従来品(22μF)と比較すると、約2.1倍の静電容量を同一面積で実現した計算になる。
最高105℃の高温環境下でも動作が可能で、大量の熱を発するIC(集積回路)のすぐそばに配置できる点も実用上の大きな強みだ。
太陽誘電も同年8月、群馬県の玉村工場で1005ミリサイズ・22μFの基板内蔵対応型MLCCの量産を世界で初めて開始した。
AIサーバーなどのIC電源ラインにおいて電源ノイズを除去・安定化させるデカップリング用途に特化した設計で、基板の表面ではなく内部に埋め込む構造によりさらなる省スペース化が可能になる、と同社は説明する。
AIサーバー向けのMLCCは、内部に1000層を超える極薄のセラミック層が積み重ねられている。ブルームバーグは、この層に埃や気泡を入れずに仕上げる製造上の難題があり、それにより競合他社の追随が困難になっていると指摘する。
需給逼迫で納期は10週から24週に
高度な製造技術が要求されるゆえに、増産は容易でない。
韓国の電子部品メーカー、サムスン電機で主席研究エンジニアを務めたフィリップ・ユン氏は韓国英字日刊紙のコリア・ヘラルドに対し、AIサーバーには絶対数として多くの部品点数が求められるだけでなく、生産プロセスの限界近くまで迫る静電容量密度が求められると説明する。
同紙が伝えるキウム証券のアナリスト、キム・ソウォン氏の分析では、こうした技術的要求の高さゆえ、ハイエンドMLCCの設備をフル稼働させても、生産効率は標準品の40〜60%にとどまることがあるという。設備投資を加速しても、供給量は標準品ほどには伸びない。
こうした事情から、納品までの待ち時間はすでに大幅に延びている。サウスチャイナ・モーニングポストが伝えたミレアセット証券の調べでは、MLCCの納期は通常の10週間から最大24週間へと、140%の増加を記録した。
トレンドフォースによると、日韓主要メーカーのBBレシオ(受注額と出荷額の比率で、1.0を超えると受注が出荷を上回り需給の逼迫を示す)も2026年4月以降、上昇が続いている。
2026年6月末時点で、村田製作所・サムスン電機・太陽誘電のBBレシオはそれぞれ1.30・1.31・1.25で、コロナ禍以降の最高水準に達している。MLCC業界全体のBBレシオも1.04に上昇した。

