優れたリーダーに必要な要素は何か。独立研究者の山口周さんは「リーダーとは単なる意思決定者ではなく、意味を作る存在であるべきだ。それには文学が武器になる」という――。(第4回)

※本稿は、山口周『コンテキスト・リーダーシップ』(光文社新書)の一部を再編集したものです。

ミーティングをする2人のビジネスパーソン
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なぜ上司の話を部下は理解できないのか

組織内にいる人は、事実を事実のまま捉えるのではなく、自分なりに意味づけてナラティブを編集します。レンシス・リッカート特別大学の組織心理学者、カール・ワイクは「センス・メイキング」というコンセプトを提唱し、人間のこのような営みを理論化しました。

ワイクによれば、人々は客観的な「事実」をそのまま受け取っているのではなく、曖昧さや不確実性に満ちた状況を前にして、自分たちなりの「解釈」を積み重ねることで現実を立ち上げています。つまり、現実そのものがあらかじめ与えられているのではなく、私たちの意味づけの過程を通じて「現実」が形作られていく、ということです。

私たちにとって、一つ一つの出来事の意味は、その瞬間には明らかになりません。現場で起きることは断片的で、情報は不足し、判断の材料も揃っていません。そのため、多くの場合、私たちは事後的に、それら一つ一つの出来事をつなぎ合わせ、「こういうことだったのだ」という物語を編み上げ、それを他者と共有することで意味づけしていきます。

ここで留意しなければならないのは、リーダーが、目の前の不確実で断片的な観察から、辻褄の合う物語を紡ぎ出すのと同じように、メンバーもまた、メンバー各自の人生経験や世界観と辻褄の合うように物語を紡ぎ出すということです。

リーダーとメンバーのあいだで物語に齟齬がある場合、あるいはメンバー同士のあいだで齟齬がある場合、リーダーの語るビジョンやストーリーは辻褄の合うものには思えず、メンバーの腹落ちは期待できません。