観察→解釈→行動
では、どのようにして、リーダーとメンバーとのあいだで生まれる「物語の不整合」、いうなれば「コンテキストのコンフリクト」を解消できるのでしょうか?
カール・ワイクの「センス・メイキング」によれば、私たちは観察→解釈→行動という三つのステップを通じて物語を作っています。組織全体として同じコンテキストの理解に至るためには、この三つのステップを意識的に共有することが欠かせません。その際、各プロセスでのリーダーとメンバーの対話が極めて重要な役割を果たします。
例えば、「観察」の段階では、事実やデータを共有するだけでなく、リーダーとメンバーが同じ現場を体験し、その場で感じたこと、自分がどのように解釈したかを率直に言葉にし合うことが大切です。数字や報告書から得られる情報だけでは、微妙なニュアンスや感情の動きは共有されません。現場をともに見ることで、「何を見たか」の理解を揃えることができます。
この「観察」のステップにおいて、ともすると忘れられがちなのが、リーダーが持っている視野や視座の共有という点です。現場で何を見たのかに加え、なぜそれを重要と考えるのか、どのような背景や文脈の中で捉えているのかを共有することで、メンバーは単なる事実認識にとどまらず、より深い理解と一貫した判断基準を持つことができます。
「なぜそう考えたのか」を語る
次に「解釈」の段階では、同じ事実を見ても人によって意味づけが異なることを前提に、対話を通じてその違いを可視化します。
マーケティングを理論として体系的にまとめたフィリップ・コトラーは、香港のシューズメーカーがポリネシアに市場進出した際、「誰も靴を履いていない」という状況について、あるセールスマンが「まったく市場が存在しない」と報告したのに対して、別のセールスマンが「巨大な市場が存在する」と報告したというエピソードを紹介しています。「誰も靴を履いていない」という事実は変わりませんが、それをどう解釈するか、意味づけするかには多義性があるのです。
したがって、リーダーは、自らの解釈の前提や使っているフレームを明示し、メンバーにも「なぜそう考えたのか」を語ってもらう必要があります。このプロセスは意見を一本化するためだけでなく、異なる視点を組織の知として蓄えるためにも不可欠です。

