「脱ドル化」は本当に進むのか。ドルが強い最大の理由は、危機のたびにFRB(世界中央銀行)が世界にドルを供給できる“特権”を持つからだ。中国は人民元を基軸通貨にするのではなく、共通通貨という別ルートでこの特権に挑む可能性があるという。河野龍太郎氏、唐鎌大輔氏の『世界経済の死角』から、そのシナリオを読み解く――。

※本稿は、河野龍太郎、唐鎌大輔『世界経済の死角』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。

マネー
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「ドル基軸通貨体制」はこの先も続くのか

【唐鎌大輔(みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト)】米中の対立が激しくなる中で、アメリカの通貨であるドルを基盤とする世界経済の仕組み、いわゆる「ドル基軸通貨体制」が揺らぐのではないか、という話をよく耳にしますが、河野さんはこの点についてはどう思われますか。

【河野龍太郎(BNPパリバ証券経済調査本部長・チーフエコノミスト)】戦後、世界の貿易や金融取引でドルが中心的な役割を担う「ドル基軸通貨体制」が続いてきましたが、たしかに、新興国の経済力が増しているため、相対的に見るとアメリカの経済規模は以前ほど圧倒的ではなくなっています。一見すると人民元やユーロの影響力が強まり、ドルの地位が脅かされているようにも見えます。

しかし、実際には、ドル基軸通貨体制は、ここ10~15年の間に、むしろ強化されている側面もあります。

たとえば、日本やヨーロッパの大手銀行は、海外での取引を行う際、まずグローバル金融市場でドルを借り、それを新興国に貸し付けることで利ざやを稼いでいます。

2008年のリーマンショックの際には、こうした日本やヨーロッパの大手銀行がグローバル金融市場でドルを調達できなくなり、一時的な「ドル不足」が世界的に発生しました。そのとき、アメリカの中央銀行であるFRBがベン・バーナンキ議長の下で、グローバルな「最後の貸し手」としての役割を果たすことを決断しました。