日本の為政者が認知すべき論点

【唐鎌】この10カ国だけでも世界の石油供給に占めるシェアは30%程度にのぼり、態度保留中のサウジアラビアが加われば、40%程度にまで高まります。

万が一これらの国々がドル建て取引に執着しないのだとしたら、かなり大きな話になります。

中東産油国は、原油取引の決済通貨をドルに限定した上で、外貨準備としてアメリカ国債を購入・備蓄してきた歴史があります。いわゆる「ペトロダラー体制」というものですが、これがドルの基軸通貨性を支えている部分は小さくありません。

しかし、たとえば、中国がBRICSの加盟国やグローバルサウスの国々を人民元経済圏に取り込み、原油取引の人民元化などに踏み切る可能性は、絶対にないとは言えないはずです。ペトロダラー体制ならぬ「ペトロ人民元体制」といったところです。

もちろん、一夜にしてそうなるとは思いませんが、中国がドル一強体制に挑戦する姿勢を持っていることは、現実感を持って認識すべきだと思います。日本の為政者においても認知していただきたい論点と感じます。

「それならクラブから抜けよう」となるか

【河野】ポンドからドルへの基軸通貨の移行には30~40年の長い年月を要しており、一夜にして事態が変わるという話ではありません。皆が使うから自分も使うという「ネットワーク外部性」や様々な制度的補完性が働くため、現行の基軸通貨には相当に強い慣性が働きます。

世界経済の死角
河野龍太郎、唐鎌大輔『世界経済の死角』(幻冬舎)

ただ、この議論が「遠い未来の話」とは言えなくなってきたのは、トランプ政権下で大統領経済諮問委員会(CEA)の委員長に指名されたスティーブン・ミランという人物が、2024年11月に公表した論文の中で、次のように主張しているからです。

「各国は安全保障や国際金融システムに“ただ乗り”している。その恩恵を受けている以上、相応の費用を負担すべきだ」と。しかし、我々からすれば、そもそもこの「ドル国際金融システム・クラブ」はアメリカが創設し、アメリカ自身が「途方もない特権」を享受している体制です。

それにもかかわらず、「さらに会費(負担)を引き上げます」と言われたら、「それならクラブから抜けよう」と考える国が出てきても不思議ではないはずです。

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