新興国は資本規制を歓迎

【河野】ポイントはそこです。この通貨の裏付けとして、人民元だけでなく、インドのルピーやブラジルのレアルなど、主要な新興国の通貨も組み入れるとどうなるでしょうか。

中国にとっては、アメリカから基軸通貨の地位を奪うという大きなメリットを得ると同時に、自国からのキャピタルフライトを抑える効果も期待できます。

さらに、自国だけでなく複数の有力国の通貨を使うという仕組みは、「民主的」であるとの印象を与えやすく、グローバルサウス諸国からの支持を得る可能性もあります。場合によってはヨーロッパや日本に対しても、この通貨制度への参加を呼びかけるかもしれませんね。

ただし、こうした仮想の国際決済通貨、たとえば「バンコール」のような構想がスムーズに機能するためには、一定程度の資本規制が必要となります。

現在のように、グローバルな資本移動が高度に発達した状況下では、新興国通貨を裏付けにした仮想通貨制度がうまく機能するとは考えにくい、という見方も少なくありません。

ただ、そう考える人は、重大な事実を見逃しています。それは、グローバル資本市場の自由化によってメリットを受けているのは、主に先進国の金融機関だけであるということです。

グローバル資本市場の変動に翻弄されてきた新興国は、むしろ資本規制を歓迎すると思います。

グローバルサウスやBRICsの存在感

【唐鎌】おっしゃるような新しい共通通貨を作る可能性を軽視してはいけないと、私も感じています。日本の報道を見ていると、グローバルサウスやBRICsについて「今後、看過できない存在になる」という危機感はさほど大きくありません。しかし、予断は許さないはずです。

そもそも新興4カ国(ブラジル、ロシア、インド、中国)の総称でしかなかったBRICsは2011年に南アフリカ共和国が加入し、BRIC「S」と表記されるようになりました。2024年からはイラン、アラブ首長国連邦(UAE)、エジプト、エチオピアが加わっています。

このタイミングでサウジアラビアも加わる予定とされていましたが、アメリカと中国の間で緊張感が高まる中、この話をしている今の時点ではまだ最終判断を保留しており、加盟国のステータスにはありません。

また、アルゼンチンが加わる計画もありましたが、2023年8月に加盟を決断した反米左派政権が同年12月に親米政権に代わり、やはり参加が見送られました。

BRICSのコンセプト
写真=iStock.com/Yau Ming Low
※写真はイメージです

とはいえ、2025年1月にインドネシアが加盟し、現状での加盟国は10カ国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ、エジプト、エチオピア、イラン、UAE、インドネシア)です。