トランプ大統領のBRICS加盟国に「100%の関税」発言

【唐鎌】ECBは債務危機の際、域内市場を対象として無制限に資金を供給する措置に踏み切ったことがあります。とはいえ、域外市場に向けてユーロを無制限に……というのは難しいでしょうね。基軸通貨であるドルでそれをできるFRBは、やはり特別です。

しかし、そうした圧倒的な通貨を擁しているにもかかわらず、トランプ大統領は2024年11月、再任を控えた段階で、BRICS加盟国に対し「もしBRICS共通通貨を創造し、脱ドル化を進めようとするならば、100%の関税をかける」といった趣旨の脅しをかけました。

BRICS共通通貨など近い将来に実現するとは思えませんが、それでもけん制をかけるあたりに、アメリカの有する特権の大きさと、それを失うことによる損害の大きさをトランプ大統領も認識しているのだと感じました。

【河野】私もトランプ氏の2024年11月のBRICS加盟国への100%の関税発言には、強い興味を持ちました。

現在のドル基軸通貨体制は、アメリカにとって非常に有利な仕組みになっています。通常、新興国が経済力をつけるためには、まず先進国から資金を借りて投資する必要があるはずです。そのため資本が先進国から新興国へ流れるのが、本来の自然な流れです。

しかし、現在の「ドル基軸通貨体制」では、ドルを持たないと新興国は国際金融システムに参入できません。

そのため新興国は、アメリカが発行するドル通貨やアメリカ国債などの負債を手に入れるために、必死に資本輸出をしているのです。つまり、新興国がアメリカに投資しているわけです。

国会議事堂の前を飛ぶアメリカ合衆国の旗
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アメリカの「途方もない特権」

【唐鎌】本来なら資本は先進国から新興国へ流れるものですが、実際には新興国がアメリカのドルを求めて資本を流出させるという、通常とは逆の現象が起きている、ということですね。

【河野】はい。アメリカは経常収支の赤字が続いています。これは、所得よりも個人消費や設備投資などの支出が多いことを意味しています。

本来、こうした状況が続くのは、海外からの借金を重ねているということであり、経済的には不健全なはずです。それでもなお成り立っているのは、新興国が単なる紙切れであるはずのドル通貨やアメリカ国債を喜んで購入しようとするからです。

もしアメリカが、この「途方もない特権」を振りかざすようになれば、たとえば中国が「ドルの代わりに、人民元など複数の通貨を裏付けとした新しい仮想通貨を導入しよう」とグローバルサウスに呼びかける可能性もあります。

「途方もない特権」というのは、1960年代初頭、フランスのドゴール政権の財務相だったジスカール・デスタンが、ドル基軸通貨体制があまりに非対称的であることを批判する際に用いた言葉ですが、当時よりもはるかに特権は強くなっています。