世界中央銀行のような役割を果たしたFRB
【河野】「最後の貸し手」というのは、金融市場を考える際の重要なキーワードです。金融危機が発生したときに、皆が万が一に備えて資金を蓄えておこうとするので、金融市場で資金が不足するようになります。これが危機の本質ですが、その深刻化を避けるため、中央銀行が無制限に資金を貸し出す役割のことを「最後の貸し手」というわけです。
これは一国の話ですが、グローバル金融市場で危機が起きると、ドル資金の奪い合いが起こったので、FRBがあたかも世界中央銀行のような役割を果たし、各国の中央銀行を通じて、市場にドル資金を供給したということです。
具体的には、FRBはECB、日本銀行、カナダ銀行、イングランド銀行、スイス国立銀行の5大中央銀行に対して、各国の通貨とドルを無制限に交換(スワップ)できる仕組みを導入しました。これが「通貨スワップ協定」です。
当時、各国の大手金融機関が欲していたのは、ドル資金でした。これら5つの中央銀行は、自国通貨ならいくらでも金融市場に供給できますが、ドルを供給できるのは当然にしてFRBだけです。
中国はFRBになれない
【唐鎌】結果的に日銀は、FRBから調達したドル資金を日本国内の銀行に、ほぼ無制限に供給できるようになり、危機的な事態は収束に向かいましたね。
【河野】はい。その後、コロナショックの際には、FRBはその5大中央銀行に加え、オーストラリアやニュージーランド、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、韓国、ブラジル、メキシコ、シンガポールなど有力な新興国を含む9つの中央銀行にも、ドルを積極的に供給しました。
結果的にアメリカのFRBは、リーマンショックとコロナショックという2つの危機を通じて、「グローバルな最後の貸し手」としての機能を果たすようになったわけです。
このように、FRBが世界の中央銀行として機能している限り、ドル基軸通貨体制は簡単には崩れないと、これまでは断言することができました。
【唐鎌】アメリカ以外の国の中央銀行が、自国通貨で同じことができるとは考えにくいですよね。そもそもドル以外の通貨に、そうした需要の急増もなさそうではありますが。
【河野】その通りです。中国が国際的な人民元システムを作り上げたとしても、世界的な金融危機が起きたとき、中国がFRBのように無制限の資金供給を行う能力をすぐに身につけるとは考えにくいでしょうね。

