堅実派の投資家がAIで未知の半導体株に踏み込んだ。成功と失敗から学んだ「AIとの間に引くべき一線」とは――。

「門外漢」の半導体関連株 AIで投資に踏み込む

元手200万円で始めた株式投資で資産が10億円に――。

私が26年かけて築き上げた資産です。リーマン・ショックで資産を大きく減らしたこともありましたが、一つの銘柄に深入りしすぎず幅広く分散させることでリスクを抑えて投資を続けてきました。この基本方針は今も変わらず続けています。

私が得意とする不動産の分野では、マンションの竣工状況や売買データから需要を読み解いて売買を決断していました。小型株なら、誰も注目していない会社の決算資料を丹念に読み込んで割安に放置された成長企業を見つけ出していました。そうした一つの株が売買に適しているのかを地道に調べていくのが私の武器でした。

しかし、分散投資とは言いつつも、投資を始めてからずっと手を出せていなかった領域がありました。それが半導体関連の株です。

技術的に難解で理解しにくい、というのが、自分にとって専門外の半導体に踏み込めない大きな理由でした。IR資料を読んでも専門用語の壁に阻まれて、内容は頭に入ってきませんし、知人の投資家から有望銘柄を教えてもらったこともありましたが、やはり自分で事業を理解し、納得して売買できない以上は、この分野に手を出す気にはなれませんでした。

転機が訪れたのは2023年の春。チャットGPT(ChatGPT)が世間に浸透し始めたころ、私も調べもののツールとして使い始めていました。

折しも半導体セクターが好調を続けており、「自分もこの波に乗りたい」という思いが芽生えていました。このころから、事業のテクニカルな面をAIに質問するようになります。自分の言葉で理解できるまで対話を繰り返すことで、未踏だった半導体という世界に足を踏み入れることができ、投資の幅を広げることができました。現在ではチャットGPT Proをメインとして、ほぼ毎日何かしらの質問をAIに投げています。

AIを使い始めてからは、結果として約3年で株式資産はおよそ2倍に増えました。もちろん相場環境の追い風もあり、AI活用による単独の効果とは切り分けにくい部分もあります。ただ、半導体をはじめとした新しい分野にも自信を持って踏み込めるようになったことで、投資先の選択肢は確実に広がりました。それが資産の変化に影響していることは間違いないと思っています。振り返ると、00年ごろにADSLの普及でインターネットを使えた投資家と使えない投資家で差がついたのと同じことが、今AIで起きていると感じています。

銘柄は聞かず事業を聞く アナリスト代わりのAI

では、私はAIをどのように使っているのか。一言でいえば、アナリスト代わりです。

機関投資家は、各業界に精通したアナリストを呼んで話を聞き、投資判断の材料にしています。アナリストは投資のプロではなく、事業分析のプロです。どんな質問をしても的確に答えてくれるけれど、「この株を買うべき」とは言いません。以前は機関投資家だけが享受できたこの「アナリストに聞ける」という環境を、個人投資家もAIによって手に入れることができるようになりました。

(構成=本誌編集部)