勇気と覚悟で「やらない」と決める
経営の仕事は漠然としがちで、会社全体を統括する社長として「いろいろなことに目を通しておかなければならない」という意識で多忙にしている方も多いでしょう。しかし、一方で、「これだけは社長がやらなければいけないこと」が存在します。他のことでどれだけ忙しく動いていても、それができていなければ仕事をしていないのと同じです。同時に、「社長がしなくてもいい仕事」も存在しています。世の中には、そのことを理解しないまま、「本当にやるべき仕事」に集中できていない社長が意外に多いのです。とりわけ中小規模の社長の場合、現場の仕事をしながら一人で何役もしなければならず、このような状況に陥りがちです。
ところが、成功する社長のパターンは決まっています。これまで数多くの経営者を見てきましたが、成功している経営者がしていることは、誰もが同じ「ワンパターン」なのです。成功の原理原則を知っていて、それを実践しているだけ。成長する社長はどなたも「社長には社長にしかできないことがある」ことをよく理解しています。そして、自分が何をすべきかを明確に把握しているのです。
ほとんどの社長は「それなら私もわかっている」と言いたくなるに違いありません。経営者は毎日、それぞれの部門が抱える課題に忙しく対処していることでしょう。しかし、「何をすべきかを把握している」という本当の意味は、同時に「やらないことを決めて、実際にやらない勇気を持っている」という意味でもあるのです。
現代経営学の父と呼ばれるピーター・ドラッカーは「優先順位の決定よりも難しいのは『劣後順位』、なすべきでないことの決定だ」と言っていますが、その通りです。おそらく多くの経営者は優先順位を決めるのも難しい状況でしょう。しかし、やらないことを決めるのは、それよりも数段難しい。さらに、やらないと決めたことを守るのはさらに難しい。なぜなら、それには勇気と覚悟を必要とするからです。
何のためにやらないことを決めるのかといえば、経営者にしかできない仕事に集中するためです。ということは、まず「社長にしかできないこと」を知る必要があります。社長にしかできない仕事とは、次の3つです。
①方向づけ
「何をやるか、やらないか」を決断して方向性を示すこと。
②資源の最適配分
ヒト・モノ・カネといった会社の有する資源を、適正に配分して成果を上げられるようにすること。
③人を動かす
会社の有する資源のなかでも最も重要な人材の活かし方。社長が何を言い、何をすれば、社員が生き生きと働き、パフォーマンスを上げていけるか。それを考え、実行すること。
この3つが、経営の最も本質的な要素です。社長の仕事とは、この3つに関して「正しい努力」を積み重ねていくことなのです。
中小規模の会社では、社長がこれらの仕事だけをやっているわけにはいかないという事情もよくわかります。しかし、部下が経営の仕事をやってくれるわけでもありません。社長が自ら経営の本質に関わる仕事をすることが、会社を発展させるためには、ぜひとも必要なのです。反対に、それ以外のことは、「捨てる」覚悟と勇気を持つ必要があるのです。
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