年を重ねるにつれて気になるのが、認知症のリスク。内科医の名取宏さんは「じつは、世界中の研究結果から認知症のリスク因子が特定されている。それらを避けることで、理論上は認知症の発症を予防または遅らせることができるかもしれない」という――。
脳のイラストイメージを持つ医師
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「脳トレがいい」という証拠は不十分

年齢を重ねると「できたら認知症になりたくない」と考えたりします。もちろん、認知症になっても楽しく生活を送っている人はたくさんいますが、健康な状態を長く保ちたいと思うのは自然なことでしょう。

そんななかでよく耳にするのが、「認知症予防には、脳トレ(計算ドリルやパズル)がいい」といったアドバイスです。テレビや健康雑誌で、こうした話を見聞きしたことがある人も多いのではないでしょうか。しかし、「脳トレは無意味」とまではいいませんが、認知症を防ぐという明確な証拠はありません。

では、私たちは何を手がかりにすればよいのでしょうか。こうした疑問に答えるうえで頼りになるのが、数多くの医学研究を総合して評価した論文です。個々の研究は条件や対象が異なりますが、それらを体系的に検討することで、より信頼できる結論が見えてきます。

医学誌『ランセット』による報告

認知症予防について、世界中の研究をまとめて評価した代表的な報告として知られているのが、医学誌『ランセット』の常設委員会による「認知症の予防、介入、ケア」に関する報告です(※1)

2024年に発表された最新版では、多数の研究を精査した結果、認知症に関連する14の「修正可能なリスク因子」が示されました。これらの要因を減らすことで、全認知症の約45%は、理論上は予防あるいは発症を遅らせることのできる可能性があります。これは意外とすごいことです。

ここでいう「修正可能」とは、認知症のリスク因子のなかで、生活習慣や社会的な環境などの変えることができるものを示します。例えば、年齢や遺伝要因は、認知症と密接に関係しながらも、私たちの力では変えられません。だから、それ以外の変えられる要因に注目することで、現実的な予防の手がかりが見えてくるのです。

※1 Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet standing Commission - PubMed