子供を背中に乗せながら…
私が撮影中に最も衝撃を受けた光景の一つに、子連れのメスによる交尾があります。先ほども触れましたが、本来、生物学的な目的が「種の保存」だけであれば、すでに子供を育てている授乳中のメスが交尾をする必要はありません。しかし、彼女たちはオスを求め、行為に及びます。その姿は、あまりにもたくましく、真剣すぎるため、ある種、滑稽でさえあります。
ある時、私は背中に小さな子供を乗せたまま、あるいは首に子供をマフラーのように巻き付けた状態で交尾をするメスを目撃しました。子供は母親の背中にしがみつき、何が起きているのか分からずにキョトンとしながら一緒に揺れています。しかし、母親であるメスはそんなことお構いなしです。子供を背負った重みなどものともせず、オスとの行為に没頭しているのです。
この行動は、ゴリラにおける性行為が、純粋な「繁殖のための行為」ではないことを如実に物語っています。彼女たちにとっての交尾は、パートナーとの絆を深めるためのコミュニケーションであり、あるいは純粋な快楽を求めての行為なのかもしれません。
彼女たちは「母親」であると同時に、一人の「メス」としても生きているのです。育児中だからといって、自分の性的な欲求や、パートナーであるオスとの関係性を犠牲にすることはありません。子供が背中にしがみついていようとも、彼女たちは自らの欲望と生存戦略に忠実です。
そこには、私たち人間が勝手に抱いている「母性」の枠には収まりきらない、野生の力強さとリアリズムが存在しています。
「メス同士の同性愛」はなぜ起きるのか
ゴリラの一夫多妻制ハーレムを観察していると、さらに興味深い行動に出くわすことがあります。それは、メス同士による同性愛行為です。オスに対するのと同じように、独特の表情で誘いかけ、互いの性器を擦り合わせるのです。繁殖には直接結びつかないこの行為には、ゴリラ社会特有の切実な理由が隠されています。
理由の一つは、オスに相手にされなかった時の「代償行為」です。メスがいくら熱心にソリシット(誘惑)しても、オスが疲れていたり、気分が乗らなかったりして無視されることは珍しくありません。そんな時、満たされなかった欲求や寂しさを埋めるかのように、メス同士で慰め合うのです。
もう一つ、より重要な理由として「処世術」としての側面があります。ゴリラの群れは完全な実力社会であり、階級社会です。新しいメスが別の群れから移籍してきた時、彼女はハーレムの中で最下層の地位に置かれます。古参の先輩メスたちからいじめられたり、美味しい食事場所から追い払われたりすることは日常茶飯事です。
そこで新入りのメスは、群れの中で力を持つ上位のメスに近づき、性的な関係を持つことで気に入られようとします。「私はあなたの敵ではありません、あなたに従います」という服従と親愛の情を、性的なスキンシップを通じて示すのです。
これは、いじめを回避し、群れの中で自分の居場所を確保するための、涙ぐましい生存戦略と言えるでしょう。

