いくつになっても、冴えた頭のままでいたい。脳の衰えを感じる人と感じない人にはどのような差があるのか。読者4366人が回答したアンケートから探る――。

「脳疲労」は回復可能だが「脳の老化」は加齢で進む

プレジデント読者は脳の衰えをいつから、どれほど実感しているのか。アンケート調査の結果、読者4366人から回答を得た。その結果、脳の衰えを感じない人ほど、脳の休ませ方がうまいことがわかった。3万人以上の「もの忘れ」患者を診てきた奥村歩医師は「正しい休み方を知れば、認知症の発症リスクも小さくできる」と話す。

Q1では、この5年間の「もの覚え」の変化を聞いた。「もの覚えのしにくさ」を感じるのは8割超で、世代による差はほぼなかった。Q2では、脳の衰えを感じた年齢を尋ねた。40代は「40代」、70代以上は「70代」が最多で、どの世代も直近で衰えを感じているようだ。

奥村氏は「世代によって原因は異なります」と話す。

「働き盛りである40代のもの忘れの大半は、情報過多による『脳疲労』が原因です。脳疲労は正しい休息と生活習慣の見直しで回復しますが、将来の認知症の原因になりえます」

8割超が5年前よりもの覚えがしにくいと感じている どの年代も、衰え始めの実感は 「今の年代から」が最多

一方、50代以降は事情が変わる。「2014年に『Acta Neuropathologica』誌に掲載された論文によると、記憶を司る海馬を萎縮させるリン酸化タウが50代の約9割の人に溜まり始めます。もの覚えの悪さは、脳の変化なのです」。つまり脳の衰えには、回復できる「脳疲労」と、加齢で進む「脳の老化」がある。自分のもの忘れがどちらかを知ることが、対策への第一歩となる。

衰えを感じたきっかけを聞いたQ3の1位は「人の名前がすぐに出てこなかった」で77%。だが奥村氏は「病的なもの忘れではない」と言う。「脳の情報処理は、入力、整理整頓、出力の3段階。名前や漢字が出ないのは、頭が情報過多でゴミ屋敷化し、出力につまずいた状態。まさに脳疲労の典型です。年齢を重ねるほど覚えた名前も増え、取り出しに時間がかかるのです」

もの忘れ以外にも老化を感じる変化は多い。Q4の老化の実感は「視力の低下」が60.1%で1位、「聴力の低下」も5位に入った。目と耳は入力を担う脳の入り口だ。「聴力低下の原因は、言葉がすっと脳に入らないという脳機能の問題という可能性もあります。放置すれば会話が減り、刺激が細って認知症リスクに直結します」と奥村氏は話す。2位の「疲れやすさ」も脳疲労のサインだ。「マラソンで足が止まるのも筋肉の限界ではなく、脳の疲れ。疲れはすべて脳が感じているのです」

悪影響だった習慣の自覚は世代で割れた。Q6で30代以下〜40代の1位は「スマホの見すぎ」。50代・60代は「夜更かし・睡眠不足」が、70代以上は「運動不足」が1位だ。「睡眠は脳を充電し、運動は脳を鍛える時間です」と奥村氏は語る。

自覚症状編脳の衰えは記憶力、体の衰えは視力から実感

不安と無気力が脳の最大の敵

衰えを感じる人と感じていない人では、日々の行動が違うようだ。習慣を聞いたQ7で衰えを感じない人が最も続けているのは「運動」、次いで「睡眠の改善」だった。奥村氏はこれを医学的に裏づける。「認知症予防の生活習慣は歩くことが大事。週3回、1回30分の有酸素運動で十分です」。読書や学び直し、会食も上位に入るが、「ポイントは人と楽しく関わりながら頭を使うこと。一人で行う脳トレより、会話を伴う活動のほうが脳全体を鍛えられます」。

読者の意識も前向きだ。Q8では9割超が「生活習慣で脳の衰えは遅らせられる」と回答した。この姿勢こそ重要だと奥村氏は言う。「不安と無気力が脳の最大の敵。改善できると知ることが、すでに予防になっているのです」