飲み会の最中や後に、ご飯や麺。「甘いものは別腹」。その何気ない習慣が、内臓脂肪だけでなく、脳の老化まで早めているとしたら――。アメリカの研究では、中年期に肥満だった人のアルツハイマー型認知症の罹患率は通常の約3倍、脳血管性認知症は約5倍と報告されている。また、イスラエルの研究では、体重が1%減ると脳の老化が約8.9カ月分抑制されたという相関が示された。重視すべきは体重ではなく内臓脂肪だという。では、脳のためにどう痩せればいいのか。

皮下脂肪ではなく「内臓脂肪」を減らす

私が勤めている病院のダイエット科を受診される方には、「脂っこいもので太った」とおっしゃる方が大勢います。ですが、実際は糖質(白米やパン、麺類、間食の菓子や果物)を常習的に摂っているケースがほとんどです。したがって、減量には脂質を減らすことよりも糖質を減らすことのほうが有効です。

皮膚のすぐ下につく皮下脂肪は、血流が少なく、たまりにくいけれど落ちにくい。対して内臓の周りにつく内臓脂肪は血管が豊富で、たまりやすいが落ちやすい。しかも内臓脂肪は、インスリンの効きを悪くする物質や動脈硬化を促進する物質を、皮下脂肪よりも多く分泌します。見た目を左右するのは主に皮下脂肪ですが、体を内側から蝕むのは内臓脂肪のほうです。だからこそ、落とすべきは皮下脂肪ではなく内臓脂肪なのです。

日本人は皮下脂肪をためにくく、内臓脂肪がつきやすい体質の方が多いといわれます。これは、正しい方法で減量すれば、体の内側から健康になっていきやすいということでもあります。

前川 智『イラスト&図解 ゼロから知りたい! 内臓脂肪の教科書』(西東社)
前川 智『イラスト&図解 ゼロから知りたい! 内臓脂肪の教科書』(西東社)

逆にいえば、部分痩せ、脂肪吸引で見た目だけを整えても、健康改善には直結しません。鏡に映る自分は変わっても、中身は変わらないのです。

では、内臓脂肪はどう脳に関わるのか。鍵になるのがインスリンです。インスリンは、すい臓から分泌され、血液中のブドウ糖を全身の細胞に取り込ませることで血糖値を下げるホルモンです。内臓脂肪が増えると、このインスリンの効きが悪くなっていきます。これが「インスリン抵抗性」で、インスリンの量が減るわけではありません。

糖質を摂りすぎる状態が続くと、細胞の中はすでに糖でいっぱいになっているため、「もうこれ以上はいらない」とインスリンの働きを拒み始めます。行き場を失った糖は血液中に留まり続け、血糖値が高いままになる。肥満の初期の方は、むしろインスリンの分泌機能は良好で、分泌量も十分にあります。しかし、糖質過多の状態が続くうちに、どこかのタイミングで細胞側の抵抗が始まり、量はあるのに効かない状態へと段階的に移行していくのです。

このインスリンには、脳内のアミロイドβという特殊なたんぱく質を分解し、神経細胞を保護する働きもあるとされています。効きが悪くなればこの機能が落ち、アミロイドβが蓄積してアルツハイマー型認知症の発症につながる、という経路が指摘されています。実際、アルツハイマー型認知症患者の約60%で内臓脂肪の増加が見られたという報告もあります。

加えて、血糖値が急上昇と急降下を繰り返す「血糖値スパイク」が血管を傷つけ、動脈硬化が進行し、脳血管性認知症のリスクも高まると考えられています。

なお、認知機能のピークは20代で、30代から低下が始まるとされ、肥満はその低下を早めます。つまり、30代のうちから、内臓脂肪を意識しておく必要があるのです。

【図表】内臓脂肪は2方向から脳を老化させる

急激なダイエットは脳にダメージを与える

内臓脂肪を落とすために、私が外来で指導している方法をお伝えします。カロリー制限は「量」の話。空腹を我慢することになるので続きません。それに対して糖質制限は「質」の改善です。何を食べるかを変えるだけなので、我慢をせずに済みます。

(構成=本誌編集部 写真=PIXTA)