「血管ケア」の正解認知症といえば「脳細胞が知らぬ間に壊れていく難病」というイメージが強いが、血流との関係が明らかになってきた。血管をしなやかに保つことで、脳は若々しいままに機能するのだ。そのメカニズムと対処法を紹介する。

認知症の原因の9割は血管・血流の病気

誰にとっても他人事ではない切実なリスクとなっている認知症。多くの人の身近にありながら、まだまだ誤解も少なくないようです。例えば認知症とは、単一の「病名」ではありません。脳の動きが低下し、記憶力、判断力、理解力などに支障が出て、日常生活に困りごとが生じる「状態」のことを指す言葉です。

認知症の原因とされる病気にはいろいろあります(下図表)。さらに近年は、アルツハイマー病と脳血管障害が併存する「混合型認知症」にも注目が集まっています。

なかでも認知症の原因として最も多く、かつ広く知られているのはアルツハイマー病です。脳内でアミロイドβと呼ばれるたんぱく質が蓄積し、神経細胞の死滅や脳の萎縮を引き起こす病気。これにより、記憶力や認知機能が徐々に低下していくことが知られています。

アルツハイマー病は高齢者に多いため、日本人の平均寿命が大幅に延びたことから増え続け、今では75歳以上で発症する認知症の75〜80%がアルツハイマー病を原因としているとの報告があります。

一方、65歳未満の認知症となると、アルツハイマー病起因のものは50%前後まで減少。代わりにとある別の病気を主な原因とすることが増えます。それは「血管性認知症」(詳細は後述)で、65歳未満の認知症の42.5%を占めるという報告もあるほどです。

認知症は詳しい原因がわからないまま、脳の組織が少しずつ失われていく脳の難病と考えている人が多いでしょう。でも近年は、認知症と血管、血流との意外に深い関係が解明されつつあり、注目を集めています。

なぜ、血管の不具合が認知症を引き起こすのでしょうか。脳は小さな臓器ですが、大量の血液を必要とします。血液は脳に酸素や栄養素を運んだり、老廃物を回収したり、脳環境を整える役割を持っています。

ところが、高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病や喫煙習慣などが続くと、血管は硬くもろくなり(動脈硬化)、脳に張り巡らされた細い血管まで傷めてしまうことがあります。こうなると目立った脳のトラブルを起こしていなくても、脳の血管内で小さな

ダメージが積み重なり、記憶力や判断力、意欲などがじわじわ低下していくことがあるのです。

さらに後述するように、血管性認知症だけでなく、アルツハイマー病も血流と大きな関係があることがわかってきたことで、血管性認知症を含め、認知症の実に90%近くが、血管や血流に関連する病気によって発症していることが明らかになりました。認知症は、脳だけの問題ではなく、全身の血管の健康とも深く関わる病気なのです。つまり、脳卒中や心臓病を防ぐ生活は、そのまま認知症を遠ざける生活に重なることも多いといってよさそうです。

(構成=福光 恵 イラストレーション=武曽宏幸 図版作成=大橋昭一)