古代生物と風雲児社風が全く異なる2社
ホンダと日産自動車が経営統合に向けた協議に入った。メディアは「世界3位の自動車グループが誕生」と騒ぐが、このままではうまくいかない可能性が高い。まず、今回の経営統合の背景にあるのは日産の経営不振だ。日産は1990年代に経営危機に陥り、ルノー傘下に。ルノーから送り込まれたカルロス・ゴーン社長(当時)の改革で復活したが、コストカットで将来に向けての投資ができず、2019年度には再び巨額赤字に転落している。
そこに救いの手を差し伸べたのがホンダだった。昨年の12月23日、両社は26年夏の共同持ち株会社立ち上げに向けて協議を進めることを発表。会見には三菱自動車トップも同席して、合流も視野に入れていることを明かした。
23年の販売台数は、ホンダが410.9万台で世界7位、日産が344.2万台で8位、三菱自動車が81.5万台で18位だった。3社を合計すると800万台を超え、1位のトヨタグループ、2位のフォルクスワーゲン(以下VW)グルーブに次ぐ世界3位になる。
ただ、記者会見を見ると、経営統合は日産を潰したくない経済産業省の主導で進められ、ホンダは渋々応じたというのが実情だろう。ただ、もし計画通りに経営統合が行われたとしても、統合後の経営がうまくいくとは思えない。主な理由は2つ。まず1つは、両社の社風の差だ。
日産は鮎川財閥にルーツがあり、戦前に国策で成長してきた。その影響もあってか経営手法は保守的。かつ、川又克二社長・会長の時代には労働組合と非常に近くなり、経営が自動車労連に振り回された。ゴーン氏の登場で大きな変革はあったが、組織に染みついた文化はそう簡単に変わらない。
一方、ホンダは業界の異端児だった。1970年代、マスキー法を導入したアメリカで排ガス規制が強化され日本車が締め出されかけたとき、日本での法規制に反対するトヨタや日産を尻目に、ホンダの創業者本田宗一郎氏は国会に自ら出席して規制をクリアするCVCCエンジンを発表。ホンダはもともと二輪の会社だったが、新エンジンの開発で一気に四輪市場でも存在を増していった。その勢いでアメリカでも快進撃を続け日本企業の海外展開では「ソニーやホンダのように……」という表現が褒め言葉として使われた。日産が自動車業界の古代生物なら、ホンダは風雲児。水と油でうまくいくはずがない。もっとも、ホンダは尖りすぎていて他のどこともうまくいかなかった。90年代前半にイギリスのローバーと資本提携して技術供与したがうまくいかず、BMWに経営権を奪われた。99年にゼネラルモーターズ(以下GM)と提携したが、関係は数年で終了。近年は自動運転でふたたびGMと提携したが、共同開発計画は白紙になった。ホンダは独立精神が強くて提携下手。相手が日産でなくても、統合後は相当な軋轢が生じる可能性が高い。
経営統合が失敗するもう1つの理由は、両社の得意領域にある。ホンダと日産はスポーツカーに熱狂的なファンがいるが、売り上げの中心は他の一般的な車種であり、カバーしている範囲は似ているし、地域を見ても、両社とも北米が主戦場だ。得意な車種や地域に違いがあれば統合はシンプルに足し算になりうるが、重複しているとメリットが少ない。カルチャーが似ていて車種や地域で補完関係にあれば理想だが、ホンダと日産は逆パターン。うまくいく要素は少ない。唯一問題なく生き残るのは世界トップのホンダの2輪車だろう。途上国では今後もバイク時代が続くのでしばらくは合従連衡の外側にあって利益を上げ続けるだろう。
世界中で自動車大手が苦戦している理由
経営統合して規模が大きくなれば、経営が安定して潰れにくくなるという見方もある。しかし、規模の大きさが有利に働いたのは過去の話。実際、世界の自動車メーカーを見ると、トヨタを除き、大手はどこも苦戦している。
現状で世界2位のVWグループ、3位のGMが苦戦している主な原因は同じ。1つは賃金の増加。どちらも組合が強く、賃上げや雇用保障を求めるストライキに苦労している。これではコスト競争力で他のメーカーと戦えない。
もう1つの共通点は中国市場に注力していたことだ。成長市場だった中国は、コロナ禍以降、景気は減速している。母国での労働者の賃上げによるコスト増は、中国市場の成長により吸収できていたが、もはやその恩恵はない。VWグループは会社史上初となるドイツ国内の工場閉鎖を一時検討していた。労組の反対で見送られたが、そのかわりに賃金の減額が決まり、3万5000人の人員削減方針も示された。
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