「EV一本賭け」では足元をすくわれる

中国EV市場は、なお巨大で技術的にも強い。欧州勢も規制対応と高級車づくりの蓄積を持つ。トヨタもBEVとソフトウェアでは課題を抱える。だが、2026年の市場が示したのは、単線の未来予測に企業の命運を預ける危うさだった。

EV一本に賭けた企業は、補助金、電池価格、消費者の所得、充電網、規制変更に大きく揺さぶられる。一方、複数の技術を持つ企業は、地域ごとの需要に合わせて重心を動かせる。これは自動車産業における分散投資であり、経済安全保障上の保険でもある。

補助金や規制は市場を立ち上げる力を持つが、技術を一つに絞りすぎると、需要の変化や資源価格の変動に弱くなる。脱炭素を急ぐほど、電源構成、送配電網、充電設備、整備人材、リサイクル体制を同時に整える必要がある。動力源の選択肢を残すことは、移行を遅らせる口実ではなく、途中で失速させないための設計である。

豊田章男氏の「敵は炭素であり、内燃機関ではない」という言葉は、EVブームへの単なる反発を超え、産業戦略の原点を問い直す言葉だった。脱炭素は目的であり、BEVは重要な手段の一つである。手段を目的化した瞬間、企業も政策も、市場という現実に足をすくわれる。

「エンジン車の逆襲」とは過去への逆戻りではない。脱炭素を絵空事で終わらせないために、現実を直視する技術が、いま巻き返しているのである。

ハイブリッド車
写真=iStock.com/pictafolio
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