欧州車は「時代遅れ」だと思われている
欧州勢の苦戦も、EV化そのものの失敗として片付けると見誤る。問題は、EVへの急旋回と市場現実のズレである。
ステランティス(Stellantis)は、2026年2月6日に公表した資料で、2025年下期に約222億ユーロの費用を計上すると発表した。株価は一時30%急落した。
同社は電動化を続ける姿勢も示した。公式発表では、BEV、ハイブリッド、先進的な内燃機関を含む選択の自由を事業計画の中心に置くと説明している。痛手の本質は、EVに取り組むかどうかより、「どの速度で、どの地域に、どの価格帯で投入するか」の読み違いにある。
中国市場では、その読み違いがさらに厳しく映る4月21日に配信されたロイターの記事は、独フォルクスワーゲン(VW)、BMW、メルセデス・ベンツが、若い中国消費者から「親世代のブランド」と見られるようになったとの声を紹介した。現地メーカーは価格だけでなく、車載基本ソフト(OS)、先進運転支援システム(ADAS)、スマートコックピットの開発速度でも攻めている。
2026年1〜2月の中国乗用車小売シェアではVWが首位に戻り、トヨタ合弁も3位に上がり、BYDは4位となった。ただし、前出のジェトロが示すCPCA統計では、BYDは2025年のNEV乗用車販売でなお首位である。
「BYD4位」は、2026年初の全体市場における短期の順位変動として読む必要がある。
トヨタが捨てなかった「ハイブリッド」という答え
トヨタの本当の強さは、BEV投入を急がなかったことより、HEVを磨き続けたことにある。ガソリン車からBEVへ向かう途中の巨大な需要を、同社はこの中間解で取り込んだ。
HEVは充電設備を待たずに燃費を改善でき、既存の給油インフラを使える。長距離移動や寒冷地でも心理的な不安が小さい。車両価格もBEVより抑えやすい。消費者が環境性能と家計を同時に見る局面では、この「中間解」が強い。
新興国や地方市場では、HEVの現実味がさらに大きい。販売店、整備工場、給油所という既存インフラを使いながら、燃費を改善できるからだ。商用車や地方の通勤車は、車を止めて充電する時間が収入や生活に直結する。環境性能を上げながら運用を変えずに済むことは、スペック表以上の価値を持つ。
さらにHEVは、エンジン、モーター、電池、制御ソフトを組み合わせるため、既存の部品産業と電動化投資を橋渡しできる。雇用と技術を急に断ち切らず、燃費改善という成果をすぐ出せる点も大きい。
トヨタの優位にも課題は残る。BEVの世界首位は中国勢やテスラの領域で、トヨタは追う立場にある。中国勢はソフトウェア、ADAS、電池、価格競争力で存在感を高めている。米国、欧州、中国の規制が急変すれば、HEVの優位が揺らぐ可能性もある。今回見えているのは、トヨタの完全勝利というより、複線戦略が少なくとも現時点では合理的だったという事実である。

