なぜ「EV1本足」は危ういのか

2024年1月23日に公開されたトヨタイムズの記事では、豊田氏が「一つの選択肢じゃダメ」と語り、BEVの市場シェアについて「どれだけ進んでも30%」との見方を示したことが紹介されている。さらに、3年間ひとりで言い続け、相当叩かれたという趣旨の発言もあった。

この発言を「EVは終わる」と読むと、論旨を誤る。トヨタ自身もBEVを開発している。2025年3月12日に公表されたトヨタ欧州の資料は、欧州でBEV投入を広げる一方、顧客や地域に応じて複数の低排出技術を出す「マルチパスウェイ」を掲げている。

一本足戦略の盲点は、世界市場のばらつきにある。都市部で自宅充電ができ、電力が安く、所得が高い消費者にはBEVが合う。充電網が薄く、長距離移動が多く、電力料金が不安定な地域では、HEVやPHEVのほうが現実的な場合もある。政策が単一の解を押し出しても、現場の需要は単一化しにくい。

ここに、トヨタの複線戦略が入り込む余地があった。

中国EVは「売れても儲からない」状態に

「EVバブル崩壊」という言葉が映しているのは、過剰な成長期待と、採算を後回しにした競争が、利益という現実に突き当たった姿である。2026年6月26日に公開された日本貿易振興機構(ジェトロ)の分析によれば、中国の2025年自動車販売は3440万台、NEVは1649万台で、販売比率は47.9%に達した。

中国のNEVにはBEVのほか、PHEVや燃料電池車(FCEV)も含まれる。巨大市場であることは間違いない。

前出のIEAも、中国では2025年に1300万台超の電気自動車が売れ、世界販売の6割を占めたとする一方、伸び率は20%未満へ鈍化したと指摘している。さらにジェトロの分析は、中国乗用車市場信息聯席会(CPCA)の月次報告を基に、NEV乗用車の平均販売価格が2023年1月の17.87万元から2025年11月には10.70万元へ下がったことを示している。

中国の自動車製造企業の利益率も2025年は4.1%と、一定規模以上の工業企業全体の平均5.3%を下回った。値下げは消費者にとって朗報だが、メーカーには研究開発費と工場稼働率を同時に守る消耗戦になる。

その圧力は比亜迪(BYD)にも及んだ。BYDの2025年純利益は前年比19%減の326億元で、4年ぶりの減益となった。

BYD
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王伝福会長はNEV業界の競争が「残酷なノックアウト段階」に入ったとの趣旨を述べた。中国EVの強さは本物である。だが、その強さを生んだ政策主導の急拡大が、今度は利益を削る刃にもなっている。