高速バスを運行するWILLER EXPRESS株式会社(東京都江東区)は、2025年度に2年連続の過去最高益を達成した。だが、その勝因はインバウンドでも高級座席でもない。売り上げはコロナ前を下回るのに、なぜ利益が伸びたのか。フリーライターの島袋龍太さんが、平山幸司社長(56)に取材した――。(前編)

️なぜ「2年連続の過去最高益」を達成できたのか

2025年、全国23路線の高速バスを運行するWILLER EXPRESS(ウィラーエクスプレス)は前年比で増収増益を記録し、過去最高益を叩き出した。前年に続き、2年連続の最高益更新だ。

爆増するインバウンド、ホテル価格の高騰、推し活ブームなど、いま高速バス業界には強力な追い風が吹いている。さらに、最近では「高級シート」も人気だ。かつては快適さに目をつぶるのが暗黙の了解だった高速バスだが、近頃は高価格帯で個室さながらの快適空間を提供する車両が増えた。WILLER EXPRESSも通常価格帯から3~4倍ほどのシェル型高級シート「ReBorn(リボーン)」を、2017年から提供している。

「需要増」と「高価格化」はよくある「勝利の方程式」だろう。WILLER EXPRESSの勢いも、こうした背景に支えられているのだろうか。平山幸司社長(56)に尋ねると、返ってきたのは意外な反応だった。

東京都江東区にあるWILLER EXPRESSの本社で取材を受ける平山社長
撮影=プレジデントオンライン編集部
東京都江東区にあるWILLER EXPRESSの本社で取材を受ける平山社長

「そう単純な話でもないんです。実は、当社の過去最高売上はコロナ禍以前の2019年度。その頃よりも売り上げは下がっていますが、利益は大幅に増えました。ReBornも通常価格帯のシートに比べて利益率が高いかといえば決してそうではない。ブランド価値向上のために作った面が大きく、はっきり言えば採算度外視なんですよ」

2017年から提供を始めたシェル型高級シート「ReBorn(リボーン)」
写真提供=WILLER EXPRESS
2017年から提供を始めたシェル型高級シート「ReBorn(リボーン)」

「流行りのラグジュアリー戦略が当たっていると思われがちなんです」と平山社長は苦笑する。「需要増」と「高価格化」が主要因ではないとすれば、何が成長を押し上げているのか。平山社長はコロナ禍以前から水面下で練り上げてきた独自戦略を語り始めた。