「女性の隣は女性」のシステムを開発
過去最高益の土台は、20年来の「女性市場の開拓」にもあった。
2005年ごろ、同社は「女性の隣には必ず女性」という独自の座席配置を始めた。当時の夜行バスに席指定の概念はなく、運行管理者は予約締切後、マジックで座席表を手書きしていたという。
「当時の夜行バスは年齢が高めの男性が乗る乗り物で、女性が安心して乗れる乗り物ではなかった。だから女性の横には必ず女性を座らせると決めたんです。最初は座席表をマジックで手書きしていました」と、平山社長は振り返る。
シートにも工夫が宿る。たとえば、「寝顔を見られたくないからか、ハンカチを顔にかぶせる女性客の姿をよく目にする」という乗務員からの指摘を受けて、座席に開閉式の覆いを装着した。
デザインはベビーカーの日よけに着想を得て、シートを丸ごと覆うような形態になっている。車体は2006年に全身ピンクのラッピングを採用し、翌年に白基調へピンクを差したデザインへ刷新した。
「最初から女性をターゲットにしていたので、『伸びた』というより、女性の潜在層を顕在化させたんです。いまは乗客の7割が女性で、9割が女性になる便もある。女性に夜行バスという選択肢を広げてきた自負があります」と、平山社長は胸を張る。
ハードとソフトで女性客を取り込んだ20年が、好調の地盤になっている。
️「臭い」も武器になった
「神接客」に引けを取らないこだわりを見せるのが衛生管理だ。なかでも、着目したのが「臭い」。WILLER EXPRESSでは車内の消臭などを目的に、座席のシートを「丸洗い」しているのだという。
「お客様に快適な空間を提供するうえで、車内にゴミが落ちていないなんて当たり前の話です。見過ごされがちなのは臭いです。シートの表面に付着した汗や皮脂は悪臭の元ですから、定期的に専用の高圧洗浄機で全車両の座席シートを洗っています。詳細は控えますが、洗浄後の排水を目にすると驚きますよ。たくさんのお客様を乗せると座席はこんなに汚れるのかと。気付かれにくいですが、清潔な座席も当社の提供価値だと自負しています」
快適空間を演出する芳香剤も妥協しない。平山社長が目指したのは「石鹸の匂いのするバス」。独自に選定した芳香剤を使用し、換気や空調に工夫を凝らすことで、清潔感ある匂いを保っている。他の乗客と長時間、隣り合う夜行バスにおいて、心地よい香りが漂う空間は快適性を高め、リピート顧客を惹きつける要因になる。
さらに、忘れてはならないのが安全管理だ。WILLER EXPRESSでは乗務員の脈拍などをモニタリングするウェアラブルセンサーを導入し、営業所から運転状況をリアルタイムで管理している。乗務員が眠気を催すなど体調の変化を感知するとアラートが通知される仕組みだ。
「安全が私たちに提供できる何よりのサービスです」と平山社長は胸を張る。接客、衛生管理、安全管理、「あって当たり前」のありふれたサービスを徹底して磨き上げることで、WILLER EXPRESSは過酷な競争環境を勝ち抜く強みを手に入れた。



