活力のある中高年は何が違うのか。医師の和田秀樹さんは「脳は記憶を司る海馬よりも、ずっと先に前頭葉から老化していく。やる気を失い、挑戦や変化を遠ざけて、現状維持を求める状態が続いている場合、脳が老化していると考えられる。生気に満ちた自分をとり戻すには前頭葉を鍛えることだ」という――。
※本稿は、和田秀樹『認知症でもひとり暮らし』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。
「暴走老人」の脳に起きていること
人間の脳というものは、加齢とともに小さくなって行きます。
その中で、真っ先に委縮を始めるのが、前頭葉です。これは35年以上、老年医学の現場で1万人以上の脳のCT画像やMRI、あるいは解剖所見を見てきた私の実感でもあります。
原因の一つは、40代後半から増えてくる脳内の老化物質ともいわれています。
私たちの脳の大部分を占める大脳は、前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉の4つに分かれています。前頭葉は、ちょうどおでこの裏から頭頂部のあたりに位置し、大脳の約4割を占める、主たる部位です。
その役割は、思考や創造性、意欲、集中力、感情のコントロール、コミュニケーション、変化への対応と多岐に渡り、まさに「人間を人間たらしめている」大切な部位といえるのです。
前頭葉は、脳の中で、もっとも遅く成熟し、もっとも早く老化が始まります。
「最近、物忘れが激しくて」と心配する高齢者のかたが多いですが、脳は記憶を司る海馬よりも、ずっと先に前頭葉から老化していくので、本来、心配すべきは、前頭葉が司っていることについてでしょう。
前頭葉の機能の影響を一番受けていることは、感情です。前頭葉の老化とは、感情の老化といっても過言ではありません。
コンビニのレジで「いつまで待たせるんだ!」と店員を怒鳴りつけたり、飲食店で接客に不満があるといって「何だ! その態度は!」とキレている高齢者を見かけたことがあるでしょう。
そういった「暴走老人」は、前頭葉の萎縮がかなり進んでいる可能性が高いでしょう。そのため、強い感情である怒りのコントロールができなくなっているわけです。

