平成の「エヌビディア」的存在だった

90年代の日本電産は小型精密モーターのメーカーでした。パソコンの冷却ファンやハードディスクを駆動させる超小型の精密モーターが主力商品です。ガラケーを振動させるモーターも製造していました。

中でも日本電産はHDD用モーターでは当時世界シェア7~8割を占めていました。これは経営の世界ではニッチトップと言って、競争相手が少なく価格競争が起きないことから高収益企業になれる状況です。

ひとことで言うと当時の日本電産は「小さい分野で世界のほとんどを握っている」優良企業でした。

そこからの発展劇で旧日本電産がたどった「道」を眺めてみましょう。

まず小型精密モーターの需要が1990年代~2010年代にかけて急成長の黄金期を迎えます。堅調なPC需要に加えて、スマートフォンが普及し、さらにはクラウドによるデータセンター需要も増大します。

今、エヌビディアがAIデータセンター需要で世界一の企業になったことが話題ですが、日本電産はそのひとつ前のITブームで世界企業になる道を歩いていたのです。

さて、ここに永守流の経営戦略が加わります。

永守流の経営手法とは「利益率を徹底的に追及する経営」です。

永守流が開いた“次なる扉”

もともとグローバルニッチで利益を出しやすかった企業で、永守氏はその利益率に徹底的にこだわります。

結果として日本の製造業が平均で5~7%程度の営業利益率だった時代に、ニデックの営業利益率は15%まで高まりました。

「日本の製造業でここまで利益率が高い会社は珍しい」

と投資家が評価を始めたのです。

その結果、次の「道」が開けます。それがM&A戦略です。

旧日本電産は同業のモーターメーカーの中で赤字企業を買収します。それを永守流で黒字化させることで企業価値を高めます。

なぜ黒字化できたのかはふたつめの視点で解明することにして、事実を追っていくと、日本電産はモーターだけでなく車載部品メーカー、精密機械メーカーなど周辺分野でも同様の買収を成功させていきます。

この周辺分野への進出は、日本電産の売り物を部品からソリューションへと拡げることにつながりました。

結果として利益率はさらに上を狙えるようになります。

2010年代後半になると投資家は日本電産の前にある新たな「道」に関心を持ちます。EVがつぎの巨大市場になると考えるのです。EVには大量のモーターが必要です。投資家はニデックがEV時代の主役になることを期待したのです。

視点2:ハイプレッシャー経営手法が機能した

ではなぜ旧日本電産ではM&Aを通じて買収した赤字企業を黒字化することができたのでしょうか?

背景にあるのは永守流の、

「すぐやる、必ずやる、できるまでやる」

という三大精神と呼ばれた標語です。