「人を育てる」という考え方が欠落していた

もちろん当時のマグニフィセントセブンでもアマゾンのジェフ・ベゾス、アップルのスティーブ・ジョブス、テスラのイーロン・マスクの経営手法を振り返ると、永守流以上のハイプレッシャー経営を強いていました。

ただアメリカの場合、人材には日本とはケタ違いの流動性があります。アップルで疎まれたらさっさとアマゾンに転職すればいい世界です。ですからアメリカ流のハイプレッシャー経営にはアメないしはニンジンが必要です。

この点に永守流が時代遅れになった一因があります。

当時は日本の優秀な人材には逃げ場がなかったからニンジンが些少でもハイプレッシャー経営が成立しえたのです。少なくとも時代が平成の間はという話です。

しかし旧日本電産がニデックとなる頃には時代の変化とともに滅びの種が播かれはじめます。

そもそも永守流では成果を出す過程において、人を育てるという考え方が欠落していました。その典型的な現象が後継者不在です。

なぜ組織は不正に手を染めたのか

そのような状況下で、アベノミクスによって日本企業の経営環境が一変します。

ニデック以外の製造業もつぎつぎと息を吹き返していきます。結果としてニデックの従業員には「できるまでやる」以外に「途中で他社に行く」という選択肢が生まれました。

こうしてニデックでは優秀な経営幹部や後継者候補が社外に流出します。

では優秀ではない幹部はどうしたのでしょうか。

一部のグループ幹部が気づいたことが「できるまでやる」以外に「数字をいじる」ことでも永守会長を満足させられることでした。

書類を注意深く読み、赤を入れている男性の手元
写真=iStock.com/Ignatiev
※写真はイメージです

かつて日本を代表する経営者としてもてはやされた永守重信会長の経営手法が通用しなくなった理由は、日本経済が復活しはじめたことで転職市場が拡大したことと、永守会長からの叱責をさけるためのより安易な方法に幹部が逃げ道を求めたことが背景です。

永守流は一時代には通用した経営手法でしたが、より長い年表で振り返る場合、その時期にしか通用しない経営手法でもあったということでしょう。

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