歩けなかった人が奇跡を起こした
入院中は歩けなかった方が、自宅に戻って歩けるようになることもあります。「歩こう」と言うと「食べられないから、私、歩けない」と言う患者さんも、もちろんたくさんいます。そう思い込んでいるのです。「今歩けなくたって、歩きたいなら歩けるようになるんだよ」と話して、「じゃあがんばる」と答える人は必ず歩けるようになります。
患者さんがもう一度がんばれるくらい、心の状態を上げることができる一番の存在は家族です。家族からの「ありがとう」や「お母さん(お父さん)すごいね!」というほめ言葉が、何よりの「がんばる力」になるのです。だから僕は、「歩けない」患者さんの家族にはまず、「心の状態を上げてあげようよ」という話をします。
僕の患者さんにAさんという70代の女性がいました。彼女は病院で抗がん剤治療を受けて「余命1、2週間」と言われ、「家で死にたい」と言って、家族のいる家に帰ってきた。退院してきた時は、トイレには伝い歩きでなんとか行けるけれど、ごはんは食べられない状態でした。そこで僕は、Aさんの子どもたちに「『母ちゃん、ありがとう』と言ってあげて」とお願いしました。素直な子どもたちは、すぐに「母ちゃん、ありがとう」と言葉にしてくれました。すると彼女は幸せな気持ちになって、「もう少し生きたい」と前向きになったのです。

