「早生まれは不利」と言われるが、実際はどうなのか。東京大学経済学部教授の山口慎太郎さんは「調査から、4月生まれと3月生まれの間には進学先高校の偏差値におよそ5ポイントもの差があった。さらに、家庭環境や男女差を考慮しても、生まれ月による学力差は変わらなかった」という――。(第1回)

※本稿は、山口慎太郎『「早生まれ」は損なのか』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。

マークシートの解答用紙を記入する学生
写真=iStock.com/sengchoy
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テストの点数だけでなく進路にも影響


生まれ月によって小中学校のテストの点数に差があることはデータによってわかっています。では、その違いは子どもたちの進学先にまで影響するのでしょうか。埼玉県内のある自治体から、2017年に中学を卒業したおよそ1000人分の高校進学先データを得ることができました。

進学先の高校については、進学情報サイト「みんなの高校情報」に掲載されている偏差値を用いて分析しています。このサイトは多くの受験生や保護者の方々に利用されており、他のサイトの情報とも大きな違いはないことがわかっています。

もちろん高校の良し悪しは学力偏差値だけで測られるわけではありません。しかし、実際には学校選びで広く参照される指標であり、進学後の学習環境やその後の進路にも影響するため、多くの生徒や保護者が関心を持つところでしょう。

偏差値に「5ポイント」もの差が出る

図表1は、その結果を示したものです。縦軸は進学先高校の「偏差値」を表しています。偏差値50がおおよそ平均的な高校水準で、数字が大きいほどより学力水準の高い高校に進学していることを意味します。横軸は子どもたちの月齢で、一番左が3月生まれ、そこから右に行くにつれて4月生まれに近づき、一番右が4月生まれの子どもたちのデータになります。

グラフには12個の点があり、それぞれが各月に生まれた子どもたちの平均的な進学先の偏差値を表しています。人数は約1000人と限られているため、点ごとにばらつきが大きいですが、理解を助けるために近似曲線を引いて傾向を示しました。

図1の滑らかな曲線を見ると、全体として右に行くほど(=学年で年上になるほど)、進学先高校の偏差値が高くなっていることがはっきりわかります。具体的な数字で言うと、同じ学年でも4月生まれの子どもと3月生まれの子どもでは、進学先高校の偏差値におよそ5ポイントの差がありました。

これは30人クラスに換算すれば、順位が5~6人分も違うことになります。高校進学という将来に直結する局面で、ここまでの差が出るのは決して小さなことではありません。

もちろん、これは埼玉県内の一つの自治体で得られた結果であり、全国どこでも必ず同じ差が出るとまでは言えません。しかし、生まれ月が子どもの進路に影響しうることを示す鮮明な例であることは間違いないでしょう。