親の努力で「格差」は消せるのか
「生まれ月による成長の違いは、家庭でしっかりとサポートすれば目立たなくなるのではないか」「裕福な家庭なら、塾に通わせたり習い事をさせたりして、生まれ月の影響を小さくできるのではないか」。こんな声を耳にすることは少なくありません。
確かに、子どもの学力の発達には家庭環境が大きな影響を与えることが知られています。では、生まれ月の影響も家庭環境によって和らぐのでしょうか。
この疑問に答えるため、私たちは家庭にある本の数を手がかりに分析を行いました。本の数は、家庭が教育にどれだけ関心を持ち、学習を支える環境が整っているかを推し量る代表的な指標です。調査票には「家には、自分や家の人が読む本がどれくらいありますか」という質問が含まれていました。
年収や親の学歴といった質問は答えにくかったり回答率が低くなったりしがちですが、本の数であれば比較的答えやすく、しかも教育環境を反映していると考えられるのです。PISAやTIMSSといった国際的な学力調査でも、この質問が広く用いられています。
本が多いか少ないか、男か女かは関係ない
2016年以降のデータでは「家庭に本が10冊以下」と答えた家庭が全体の約11%を占めていました。そこで本の数が10冊以下の家庭と11冊以上の家庭に分けて、生まれ月による学力差がどう現れるかを調べました。その結果は意外なものでした。家庭に本が多いか少ないかにかかわらず、生まれ月による学力差はほとんど変わらなかったのです。
つまり、家庭環境が豊かであっても、学年内で年下にあたる子どもたちは同じように不利を抱えていることがわかりました。では、性別による違いはどうでしょうか。一般的に男の子は女の子よりも発達がゆっくりだといわれています。
そのため、同じ学年の中で年下にあたる男の子のほうが、生まれ月の影響を強く受けやすいのではないかと予想することもできます。ところがデータを確認したところ、男女で生まれ月の影響に大きな違いは見られませんでした。男の子も女の子も、同じように学年内での年齢差の影響を受けていたのです。
そして、成績によって生まれ月の影響に違いはあるのでしょうか。私たちは、成績の全体像を平均だけでなく層ごとに分けて見る方法を用いました。これが「分位点回帰」と呼ばれる分析です。子どもたちをテストの点数順に並べて、下のほう、真ん中あたり、そして上位のほうをそれぞれ取り出して比べます。

