誕生日は人生にどれほど影響するのか。東京大学経済学部教授の山口慎太郎さんは「日本では、生まれ月による月齢差が、教育年数や所得の差として固定化されやすい。これは本人の能力や努力の問題というより、制度の問題として理解すべきだ」という――。(第2回)

※本稿は、山口慎太郎『「早生まれ」は損なのか』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。

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生まれ月「格差」は大人になっても続く?

埼玉県の大規模な調査では、生まれ月が子どもの学力や非認知能力に確かに影響を及ぼしていることがわかっています。学年の中で年齢が若い子どもは、成績で不利になりやすく、自己効力感や自制心といった面でも差が見られました。

では、こうした違いは学校を卒業すれば解消されるのでしょうか。中学や高校を終えるころには体の成長も追いつきますし、進学先や友人関係も変わります。そう考えると、子どものころの小さな差は大人になれば気にならなくなるようにも思えます。

しかし一方で、学力や非認知能力は、その後の進学や職業選択に大きく関わります。もし生まれ月による差がそのまま積み重なっていくのだとすれば、就職や収入といった大人になってからの生活にも影響する可能性があります。果たして、生まれ月の違いは社会に出てからも続くのでしょうか。それとも、成長の過程で自然に解消されていくのでしょうか。

この問いに答えるため、東大の川口大司教授は、大規模な統計データを用いて分析を行いました。研究に使われたのは就業構造基本調査という国の代表的な調査で、全国の世帯を対象に就業や収入に関する情報を集めています。

30代前半で「年収23万円」の差が出る

川口教授はこの調査を活用し、1968年から1972年にかけて生まれた人々を対象に、生まれ月と教育年数や所得との関係を明らかにしようとしました。川口教授の分析によると、学年の中で最も若い早生まれの人たちは、最も年長の4~6月生まれの人たちと比べて、大人になってからも教育や進路の面で不利な状況に置かれやすいことが示されています。

具体的には、まず教育の年数に差が見られます。早生まれの男性は平均して0.13年ほど学歴が短い、つまり進学の段階でわずかに不利になっていることがわかりました。さらに、この違いは就職後の所得にも表れます。

30歳から34歳の時点で比較すると、早生まれの男性は4~6月生まれの人よりもおよそ4%収入が低いという結果が示されました。具体的な数字で考えてみましょう。民間事業所で働く人々の年間給与の平均が男性で570万円ですから(令和5年、国税庁民間給与実態統計調査)、これを基準にすると年間で23万円もの差になります。月々に直せば約2万円。

決して小さな額とは言えません。もちろん、この結果は「すべての早生まれが不利」という意味ではありません。あくまで平均的な傾向として、学年の中で相対的に若かったことが教育や職業の選択に影響し、長期的に所得に差をもたらしている可能性があるのです。