学歴がキャリアに直結する新卒一括採用
日本の研究では30代前半の所得においても差がはっきり残っているのに対し、スウェーデンやアメリカでは教育や初期所得の格差が最終的に薄れていきます。背景には制度の違いがあります。日本では依然として新卒一括採用が中心で、学歴が就職や昇進に強く影響するため、小さな教育年数の差がそのままキャリア全体に直結しやすいのです。
これに対して、スウェーデンやアメリカのように労働市場が柔軟で、転職の機会も多い国では、初期の不利を挽回するチャンスが大きいと考えられます。つまり、生まれ月の影響は「普遍的に存在する」ものの、「どのくらい長く残るか」は社会制度や雇用慣行によって決まるのです。日本の場合は制度の硬直性ゆえに、教育上の小さな差が大人になってからも所得格差として固定化されやすいのかもしれません。
ここまで見てきたように、日本では30代の時点で生まれ月による所得の差が存在することがわかっています。では、その違いは人生全体を通じた生涯所得にも及ぶのでしょうか。まず日本の事情から考えてみましょう。多くの人は学校を卒業した直後の4月に働き始めます。
「生涯所得」の観点だと有利かもしれない
そのため、同じ学年の中で早生まれの人は、同級生よりも早い時期から社会に出ることになります。しかし引退については、日本特有の定年制度を考慮する必要があります。多くの企業では誕生日を基準に65歳で退職するのが一般的で、生まれ月にかかわらず同じ年齢で引退を迎えます。そうなると、早生まれで社会に早く出た人は、その分だけ長く働くことになるのです。
このことは生涯所得という観点から見ると有利に働くかもしれません。早生まれの人は若い時期の賃金が相対的に低くても、長く働くことでトータルでは取り戻せる可能性があるからです。ただし、ここには注意すべき点もあります。より長く働くということは、それだけ多くの時間を労働に費やすということです。
もし同じ収入を得るために、より長い期間働かなければならないのだとしたら、それは別の形での負担とも言えるでしょう。生涯所得を考えるときには「金額」だけでなく、「どれだけ働いたか」という視点もあわせて考える必要があります。残念ながら、日本には人々の一生を追跡できるようなデータがなく、確かな答えを出すことはできません。

