出血は止まらない。運営初年度の赤字は約1億9300万ドル(約307億円)。内部収益率は8.56%で、最低基準の10%に届かない。米外交専門誌ディプロマットは、2024年にインドネシア側が2億5500万ドル(約405億円)の損失を計上したと報じた。黒字転換は40年先を見込む。
資金の75%は中国開発銀行からの融資だった。返済期間40年、据え置き10年。残りはインドネシアの国家予算で賄われた。「公的資金は使わない」という当初の約束は守られなかった。
「これらの数字は、このプロジェクトが短期から中期的に財務的に自立できない可能性を示唆している」と、インドネシアのシンクタンク、経済法律研究センターのムハマド・ズルフィカル・ラフマット氏は言う。
中国は「保証不要」で日本に勝ったが…
当初日本案が優勢とされた中、インドネシアはなぜ中国と手を組んだか。話は2015年に遡る。
インドネシアのジョコ・ウィドド大統領(当時)はこの年、同国初の高速鉄道計画で、日本ではなく中国をパートナーに選んだ。香港の英字オンライン紙アジア・タイムズは、この動きは中国への屈服ではなく、独自の近代化を目指す新興民主国家インドネシアの実利的な判断だったと分析した。
中国案の最大の魅力は「政府保証不要」という条件だった。プロジェクトが失敗しても、インドネシア政府が債務を肩代わりする義務を負わない。直接の財政負担もない――はずだった。だが実際には、コスト超過分12億ドルをカバーするため、インドネシア国営鉄道は中国開発銀行から総額4億4800万ドル(約712億円)の融資2件を受けた。「公的資金は使わない」という当初の約束は、反故にされた。
事業化調査を先に手がけたのは日本だった。新幹線技術をもとに、安全性と長期の維持管理を重視する堅実な計画を示していた。
だが数カ月の受注競争を経て、インドネシアは中国に傾いた。建設は速く、コストは安く、政府保証も要らない。目に見える成果を早く出したいジョコウィ政権には、抗しがたい条件だった。
「40分」の移動に2時間かかる
問題はパートナー選びだけではなかった。建設区間の選定時点で、すでに誤った道を歩み始めていたと指摘されている。
ジャカルタとバンドンの距離はわずか142キロ。車なら約3時間、在来線でも同程度で到着する。
Whooshは所要時間を30〜40分ほどに縮めたが、駅は両都市とも市街地から離れた場所にある。ジャカルタは渋滞を理由に首都移転が計画されたほど、道路の混雑が激しい。輪をかけて駅が中心部以外に立地してしまうと、高額な高速鉄道に乗った上、結局は渋滞に巻き込まれる。


